節税対策として人気のふるさと納税だが、やはりお目当ては寄附の返礼品。マグロやカツオ、シラスなどご当地の豊富な海の幸を返礼品に取りそろえ、全国自治体の寄附件数ランキング3位(2015年度。以下同)を誇る静岡県焼津市を、指をくわえて見ているのはお隣の藤枝市。
「やはり、立地の違いで差が出てしまいますね」
そうこぼすのは藤枝市企画経営課の担当者だ。納税申請13万8903件の焼津市に対して、藤枝市は約10分の1。
「港としてのブランドがある焼津市は魚介類が魅力的ですし、プロモーションにも力を入れておられます。藤枝市でもミカンやお茶は人気ですが、海に面していないので……」
知名度が高く、見た目も豪華なキラーコンテンツが豊富な焼津市のような自治体が近隣にあると、どうしても彼我の差が切実に現われてしまうようだ。
寄附件数28万8338件でランキングトップを誇るのは宮崎県の都城市。同県随一の畜産市で、返礼品にはやはりキラーコンテンツの宮崎牛を筆頭に豚、鶏、さらには馬と食用肉のオールスターを擁し、そこに焼酎まで加える盤石の布陣。ジャイアンツ並みの巨大戦力で年間42億円超を“荒稼ぎ”した。
その隣に位置し、県庁所在地として知名度も高く、海にも面する宮崎市だが、ここにも挌差が生じていた。寄附件数が1423件と都城市の100分の1にも満たない。市の言い分はこうだ。
「他の地域の生産物を返礼品にしている自治体もあると聞きますが、宮崎市の場合はそういうものに頼らず、地元産品に限定しています。それにこちらは返礼品の還元額を3割程度に抑えていますが、都城市さんはもっと高く設定しているのではないでしょうか」(納税管理課)
自前の戦力で戦い、“札束攻勢”はかけない戦略だというのだ。
「宮崎市に来ていただくための『滞在型』の返礼品に力を入れており、『指定ゴルフ場でのプレー権』(10万円以上の寄附)などがあります。寄附は欲しくても“何が何でも”というつもりはありません」(同前)
ふるさと納税版“清貧の思想”である。
※週刊ポスト2017年3月17日号