「網膜剥離はスポーツ選手がなる病気。自分には関係ない」──そう考えている中高年は少なくないだろう。だが、現実は高齢者が罹りやすい病気でもある。実際、総患者数4万4000人のうち、65歳以上の人が半数を占めている(厚労省「平成26年患者調査」より)。
網膜剥離とは、網膜が眼球の内側の壁から剥がれてしまう病気で、進行すると失明のリスクがある。主な原因は外部からの強い衝撃とされるが、なぜダメージを受けるような激しい運動をする機会の少ない高齢者が罹るのか。
「その原因は、眼球内の“老化現象”にある」
というのは、深作眼科理事長の深作秀春医師だ。15万件超という世界トップクラスの眼科外科手術実績を誇り、欧米の医師から“世界一の眼科医”と称されている。深作医師が次のように語る。
「眼球内を満たす液体の中に含まれる『硝子体線維(※)』は、眼球内で網膜と繋がっている。その線維が外部からの衝撃などで揺さぶられて引っ張られると網膜に穴が開き、そこから網膜と眼球の内壁の間に液体が入り込むことで、網膜が剥がれてしまう。
高齢者の場合、硝子体線維が加齢とともに縮んだり揺れやすくなったりするので網膜が剥がれやすい状態になる。それに加え、網膜自体も薄く破れやすくなるので、転倒などで簡単に網膜に穴が開きやすい」
【※注:硝子体内にわずかに含まれる、コラーゲンを主成分とするゼリー状の線維】
※週刊ポスト2017年3月17日号