為替相場はアメリカのトランプ大統領の発言に翻弄される展開が続いている。その真意はどこのあるのか、為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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外国為替市場に「トランプ円高」の波が押し寄せている。2017年1月のトランプ新政権の誕生前後から為替相場の潮流は大きく変わり、特に円相場はトランプ発言に翻弄される展開となっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は2017年中に少なくとも2~3回利上げすると思われ、目先の動きとしては米ドル買いの材料になる。米国の金融政策だけをみれば、米金利の上昇で本来はドル高に向かうはずだ。しかし、トランプ大統領は就任後、日本を名指しで「通貨安誘導」と批判するなど円高圧力を強めており、昨年11月の大統領選後のトランプ相場で進んでいた円安・ドル高基調が円高・ドル安に振れ始めている。
トランプ政権になってから初の日米首脳会談では、トランプ大統領が円安批判を表立ってしなかったため、週明け13日の円相場は前週末よりも円安の114円台をつけた。だが、トランプ大統領は発言が二転三転する人物だ。このままずっと円安批判をしないとは思えず、円高圧力のアクセルを踏み込むことは十分考えられる。
中国もトランプ大統領から名指しで通貨安誘導を批判されており、ドイツもユーロ安を批判されている。対米貿易黒字・上位3か国の中国、日本、ドイツが攻撃を受けている格好だが、トランプ大統領の真のターゲットは最大の対米貿易黒字国である中国だろう。だが、中国を御すのは難しいため、とりあえず叩きやすい日本をスケープゴートとして標的にする可能性がある。
トランプ大統領が日本に最も強く要求してくるのは、日米間の貿易不均衡の是正、円安の是正であることは間違いない。同大統領は政策で円高圧力、中国元高圧力、場合によってはユーロ高圧力もかけてくると思われるが、最もターゲットにしやすい通貨は日本円だろう。為替政策の最大の狙いである中国元高にするには、円高にするのが手っ取り早いという背景もある。
私は、1985年のプラザ合意のような動きがすでに始まっていると考えている。貿易不均衡是正のための米ドル高是正は、プラザ合意の時から取り組んできたテーマである。結果的には為替政策では米国の貿易赤字体質は変わらず、現在に至るわけだが、トランプ大統領は最終的に失敗するとわかっていても強硬な為替政策を実行してくるだろう。