いかにも旨そうな「高級和牛」に、エビ・カニ・イクラなどの「ご当地海産物」、老舗温泉旅館の「宿泊券」……。節税対策として人気のふるさと納税だが、やはりお目当ては寄附の返礼品。各自治体の返礼品の豪華合戦も激化し、年間42億円もの寄付を集める地方自治体も現われた。
人気者が生まれれば、その陰で割を食う者がいる。不遇をかこつ自治体の中には、「わが街」へのプライドゆえの迷走も垣間見える。
寄附件数56件の美濃市(岐阜)は昨年、寄附2万円に対する返礼品にバスの1日乗車券5枚セットを加えた。土日限定・期間限定という制約があったが、「うちの市に来てバス乗り放題なだけで返礼品として十分」と考えているとしたらスゴイ。
返礼品を出さず、寄附件数が27件に留まっていた三島町(福島)はさらに大きく出た。1万円以上で「特別町民」になれる返礼品を打ち出したのだ。町の指定施設を町民料金で使えるというのだが、特典は「500円の温泉入浴料が100円引き」などなかなか渋い。
寄附件数13件の長岡京市(京都)は「京都西山再生プロジェクト」を用意。寄附者の名前の入ったネームプレートを植樹したエリアに設置するだけでなく、植樹体験できるという。
これはいいと早合点しそうになるが「交通宿泊費等は自費となります」との但し書き。これではボランティア募集と変わらない。
それでも「オリジナル返礼品」を用意できるだけ恵まれているのかもしれない。
「事業者の少ない地域なので、地元限定にすると返礼品はほとんど用意できない。なので当市となんらかの接点があればいいという条件にしています」
そう苦しい胸の内を明かすのは福岡県太宰府市経営企画課だ。2015年まで太宰府市は返礼品を用意しておらず、寄附が3件しか集まらなかった。
そこで昨年12月から米や地元名産のお菓子などを用意するようになったというが、近隣の八女市の名物・八女茶も並べるなど、よそ様に頭を下げる涙ぐましい努力がうかがえる。
※週刊ポスト2017年3月17日号