3月12日に初日を迎える大相撲春場所では、新横綱・稀勢の里が2場所連続優勝に挑む。横綱昇進を決めた初場所では2横綱(日馬富士、鶴竜)が途中休場のため対戦がなかった。モンゴル横綱勢と総当たりとなる春場所は、稀勢の里の真価が問われる。
「1場所15日制が定着した1949年以降で、昇進直後の場所に優勝した横綱は大鵬と貴乃花、そして稀勢の里の師匠だった第59代横綱・隆の里(先代・鳴戸親方)だけ。共通するのは誰に対しても遠慮なく全力でぶつかるガチンコ相撲で横綱に昇進したこと。他の力士と群れることを極度に嫌い、『変人』とも呼ばれる稀勢の里は、昇進場所優勝の“有資格者”といえる」(協会関係者)
その徹底したガチンコ相撲を教え込んだのが先代・鳴戸親方である。稀勢の里は2002年春に中学3年で入門して以来、常識外れの指導を10年近く受けてきた。ある部屋付き親方はこういう。
「先代はとにかく稽古至上主義で、そのぶん角界の常識からすればあり得ないほどサービス精神に欠けていた。部屋にお客さんが来ているのにチャンコを振る舞わないことのほうが多かった。だから有力な後援者やタニマチもなかなかつかなかったが、稀勢の里や現役時代の田子ノ浦親方(元前頭・隆の鶴)らガチンコ力士が育った。その伝統は今、稀勢の里が所属する田子ノ浦部屋(※注)に引き継がれている」
【※注/2011年11月に当時の鳴戸親方が急死。部屋付きの西岩親方だった元・隆の鶴が鳴戸部屋を継いだが、2014年から相撲協会が公益財団法人へ移行するにあたり、先代夫人から名跡証書を譲り受ける交渉が不調に終わったため、元・隆の鶴は田子ノ浦の年寄株を取得。稀勢の里ら所属力士も田子ノ浦部屋の所属に変わった経緯がある】
※週刊ポスト2017年3月17日号