2017年は東京地下鉄(東京メトロ運営会社)、ユー・エス・ジェイ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン運営会社)などの大型IPO(新規上場)が予想されているが、IPO市場全体の展望はどうか。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長の西堀敬氏が解説する。
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2016年のIPO(新規上場)件数は83件と、前年の92社から減少となった。全83銘柄で上場後についた初値が公開価格を上回れば「勝ち」、下回れば「負け」、同値なら「分け」という基準による勝率を見ても、初値が公開価格に対して何%上昇したかという初値騰落率(全銘柄平均)を見ても、アベノミクス相場が本格化した2013年以降では最も低い水準だった。
また、投資家からの資金調達額も83銘柄で8361億円と、2015年に比べて半減した。
こうしたデータから見ると、IPO市場に陰りが出てきたと思えるかもしれない。だが、視点を変えると、決して失速していないことがわかる。
2016年の資金調達額が前年比で半減したのは、2015年には合計1兆4000億円の調達額となった日本郵政グループ3社の大型IPOがあった反動といえる。
この8361億円が投資家にもたらしたキャピタルゲインを、仮に公募・売り出し株を買った投資家が初値で売ったという前提で計算すると、1852億円となる。同様に計算すると前年は3213億円だったが、そのうち日本郵政グループ3社が2573億円を占め、この3社を除けば640億円。実は2016年の方が大きかったといえる。
全83銘柄の勝率は、前年より下がったとはいえ、67勝15敗1分けで80.7%。初値騰落率を見ても、平均でプラス72%と、どちらもまだ高パフォーマンスを維持している。今年もIPO人気は衰えず、活況が期待できると見ている。
実際、今年のIPO第1号となったシャノン(マザーズ・3976)は、初値が上場日(1月27日)翌営業日に持ち越されたことに加えて、公開価格1500円に対して初値は6310円、初値騰落率は320%強と、昨年最も騰落率が高かったグローバルウェイ(マザーズ・3936)の372%強に次ぐ水準まで買われた。
これを見ても、今年も個人投資家のリスクマネーは健在であることが確認された。ただ、上場審査の厳しい状況が続いていることもあり、今年のIPO件数は昨年並みの80~90件程度になると見ている。