「報酬も講演料も全く受け取っていないと聞いている」
森友学園を巡る疑惑について、安倍晋三首相は昭恵夫人が過去、森友学園での講演で金銭は受け取っていないと弁明した。
昭恵夫人は“総理夫人”の肩書きで全国各地で講演活動を行なっている。それらの講演でも、一切報酬は受け取っていないのか。
多くの講演会主催者が「講演料は支払っていません」「無料で協力していただきました」と答えており、報酬を受け取らないケースがほとんどなのは確からしい。だが、例外もあった。
トランプ大統領に会うための訪米を間近に控えた今年2月5日、昭恵夫人は兵庫県多可町を訪れ、町主催の「日本酒フェスタ」で〈「私」を生きる〉をテーマに〈内閣総理大臣令夫人安倍昭恵氏講演会〉を行なった。多可町の地域振興課に聞くと、「町の規定に従い、昭恵さんの場合は講演料は5万円を、現金でご本人にお渡ししています。旅費も規定に沿って、3万540円を、こちらは安倍晋三事務所にお支払いしています」と答えた。
昭恵夫人は自身のフェイスブックに〈講演の後、多可町産山田錦を使った各蔵のお酒を試飲させて頂きました〉と書き込んでいる。「私」について語って講演料をもらった上に、大好きなお酒まで飲めたのだから、きっと充実した一日だったことだろう。
ほかにも、昨年6月1日、岐阜県美濃加茂市の「地方創生キックオフ大会」では、〈内閣総理大臣夫人 安倍昭恵〉の肩書きで〈いま、思うこと〉を演題に語り、「講演料は5万円、交通費は実費で2万5980円」(企画課)が支払われた。昨年11月15日、滋賀県東近江市商工会の講演では講演料3万円+交通費、同12月9日に福岡県那珂川町の講演では講演料2万円+交通費5万6690円が、昭恵夫人側に支払われたという。
いずれも講演料はお小遣い程度かもしれない。だが金額の大小にかかわらず、総理夫人の肩書きで対価を受け取っているのであれば、それは「私人」の活動といえるのだろうか。
政治資金問題に詳しい上脇博之・神戸学院大学法学部教授は「総理夫人として講演しているのであれば、それは公務とみなされる可能性がある。そこで報酬を得ていたとすれば問題であり、適切とは言えない」と指摘する。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号