「書籍問題」で炎上したのアパグループCEO・元谷外志雄氏には様々な顔がある。日本最大級のビジネスホテルチェーンを築いた豪腕経営者にして安倍首相、森喜朗元首相にも顔が利く保守言論の重鎮。元航空幕僚長・田母神俊雄氏の「論文」を世に送り出した人物としても知られる。一体、何者なのか。評論家・古谷経衡氏が生地・石川を歩いた。
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南京事件を否定する本がホテルの客室に置かれている──そんな米中二人のユーチューバー・カップルがたまたま大手ホテルチェーン・アパに泊まった際に手にした同グループCEO元谷外志雄氏の著作内容を中国版ツイッター「微博」に投稿したものだから、すわこの「事件」は日中間の国際問題にまで発展した。
しかし私は元谷の歴史観云々の妥当性を論じるつもりはない。寧ろこの「事件」をきっかけに、国際的に耳目を集めた誰もが知るビジネスホテルの源流を辿ってみたい──。そんな滾る思いに駆られ、気が付けば北陸新幹線の切符を券売機で買い求めていた。目的地は石川県金沢市。そう、アパ発祥の地である。
二月上旬、北陸随一の大都市・金沢の冬は寒い。長い北陸新幹線のトンネルを貫通して到着したその地の遠景には、冠雪した雄大な立山連峰がそびえる。この光景はかの藤子不二雄(A)(富山出身)の名著『まんが道』で何度も出てくるものだ。
アパは石川県小松市のいち不動産会社「信金開発株式会社」からスタートした。朝日新聞出版が2014年に刊行した『まんがで学ぶ成功企業の仕事術 アパホテル』は、アパの変遷を知るには絶好の教科書である。