大相撲春場所の土俵が日本人横綱・稀勢の里の誕生フィーバーに沸く裏で、土俵外の駆け引きも白熱している。場所前の3月5日、貴乃花親方が大阪で行なわれた落語家・桂文福とのトークショーに参加した。
「驚いたのは貴乃花親方が横綱・白鵬の“国籍問題”に言及したこと。モンゴル国籍のまま一代年寄になろうとする白鵬の意向を、『それは難儀なんじゃないでしょうか』と否定する言い方をしたのです」(担当記者)
一代年寄は貴乃花親方や北の湖前理事長(故人)のように、現役時代の著しい功績が協会から認められた力士が引退時の四股名のまま協会に残れる特例制度だ。
「白鵬は優勝37回の大記録を打ち立てているものの、一代年寄は年寄に準じるため日本国籍の者に限られ、帰化しない限り取得できないと解釈されてきた。ところが白鵬はモンゴル国籍のまま協会に残ろうとしているのです。2月21日には3人目の内弟子(金沢学院大・中村友哉)を取ると発表。本来、親方として協会に残れるのが確実な者以外は内弟子を取れないはずですが、なし崩し的に既成事実を積み重ね、一代年寄も取得しようとしているようです」(同前)
そうした白鵬の考えに特に否定的だったのが北の湖前理事長だ。現在の八角理事長(元横綱・北勝海)は北の湖路線の継承者だけに、白鵬は昨年の理事長選で八角親方と争った貴乃花親方に期待を寄せていたという。協会関係者が語る。
「たとえば2月の節分の豆まきイベントは力士や親方の関係がよくわかる催し物ですが、今年、貴乃花部屋の大阪場所宿舎である京都・龍神総宮社での豆まきには、貴乃花部屋の力士に加え、白鵬も出席していた」
そうしたなかで貴乃花親方から否定的な発言が出たのだ。
「トークショーでは白鵬について『日本で生活して、日本で名を上げた。(白鵬自身が)日本で育てられた力士という見解を持ってくれると、皆さんも喜ぶのではないですか』と独特の言い回しで語りました。さらに、白鵬の協会批判についても『横綱であっても、どんなに活躍して成績をあげても、協会上層部(の方針)は自分たちの師匠と同じ』と断じた」(前出の担当記者)
しかも、横綱・稀勢の里誕生で協会からみた白鵬の“重要度”は相対的に低下している。土俵外の戦いでは、白鵬の足が徳俵にかかっている。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号