16年にわたって経営トップを務めてきた日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長兼CEOが4月1日付でCEOと社長を退任し、会長に専念する。
「コストカッターとして大鉈を振るい、日産の危機を救った名物経営者も63歳。これまでは“ゴーンなき日産”なんて想像もできなかったが、今回の人事でいよいよ時代が変わる」(業界誌記者)
ニュー日産の行方とともに業界雀の関心を集めているのはゴーン氏の退職金。
過去に高額だった事例としては、オリックスの宮内義彦・元会長の44億6900万円(2015年3月期)がある。昨年は、ソフトバンクグループ前副社長のニケシュ・アローラ氏の「退職金68億円」も話題となった。
役員報酬が10億7100万円(2016年3月期)に上り、経営者年収ランキング上位の常連のゴーン氏なら、史上最高額となる100億円超えか―─そんな疑問を日産にぶつけると、意外な答えが返ってきた。
「当社は2007年から役員退職慰労金制度を廃止しております。したがって、ゴーンが将来的に会長職を退任した際にも、退職慰労金は支払われません」(広報部)
なんと、「ゼロ」だというのである。
「日産が当時、役員退職金をなくしたのは、株主からの“額の決め方が不透明だ”という批判をかわすためだったといわれています。期ごとの業績に連動する役員報酬に一本化したほうが、株主にとってはわかりやすい。一方、退職金をなくす改革によってゴーン氏は、役員報酬を“もらい過ぎ”だという批判を抑え、自身の高給を維持できたともいわれています」(日産関係者)
昨年12月、日産自動車が三菱自動車を子会社化したことに伴い、ゴーン氏は三菱自動車の会長にも就任。
「業績不振の三菱が、ゴーン氏の会長就任と合わせるように、役員の報酬総額の上限枠を従来の3倍にあたる年30億円へ引き上げた。今後、ゴーン氏には三菱からも高額報酬が支払われることになるでしょう」(経済ジャーナリスト・福田俊之氏)
上場企業で報酬1億円以上の役員の開示が義務付けられた10年以降の7年間だけでも、日産からゴーン氏に支払われた役員報酬は、計69億4900万円に上る。そこには“退職金の前払い”も含まれていたというわけだ。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号