米トランプ政権は今後、日本に対して本格的に貿易交渉や経済協定の見直しを主張してくることになる。しかし大前研一氏は「トランプ大統領の主張にまともに向き合ってはいけない」と警告する。その理由はなぜか? 大前氏が解説する。
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私は、このままいくとトランプ政権は長くはもたないと思う。その理由はまず、イスラム教徒が多数を占める中東・アフリカ7か国の国民の一時入国禁止をはじめとする、世間を混乱させるような脈絡のない大統領令を次々に出していることだ(※注)。あれは極右メディアの会長だったスティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問がベースを書いたものに、トランプ大統領がテレビカメラの前でサインしているだけである。
※注:その後イラクを除外し6か国に変更
つまり、バノン氏が“脚本家”で、トランプ大統領は“司会者(MC)”なのだ。バノン氏は「影の大統領」とも呼ばれている。そんなやり方がアメリカで長続きするはずはないだろう。
もう一つの理由は、側近や閣僚の顔ぶれがまともではない上、その組み合わせが支離滅裂で、いつ彼ら同士が衝突して内部分裂してもおかしくないからだ。
たとえば、トランプ大統領の愛娘イヴァンカ氏の夫で上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は敬虔なユダヤ教徒だが、バノン氏は「白人至上主義者」で「反ユダヤ主義者」である。
さらに、大統領選挙でトランプ氏に25億円とも言われる多額の献金をしたラスベガス・サンズ会長のシェルドン・アデルソン氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にも強い影響力を持つと言われるユダヤ社会の実力者なので、トランプ氏がバノン氏を重用していることを快く思っているはずがない。