タレント本収集家としても知られるプロインタビュアー・吉田豪氏の本棚には、芸能人暴露本全盛期といわれた1980年代の“名著”がたくさん並んでいる。女性アイドルもさかんに告白本を出版した1980年代、ある「告白ブーム」があったと吉田氏は指摘する。
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今では考えにくいですが、1980年代は現役バリバリのアイドルが、単行本で衝撃の告白をするケースも少なくありませんでした。
アイドル本で思い出深いのが伊藤麻衣子さんがアイドル雑誌の『BOMB』編集部から出した『夢の時間割』(1983年・学習研究社刊)。グラビア誌に掲載されるためにはオーディションがあるが、初めから結果が決まっている、ということが書いてあるんです。当時19歳の現役アイドルがそれ言っていいのかよ?って(笑)。
伊藤さん自らオープンにしてますが、25歳まで処女だったくらい男性に対してはウブで真面目な人。本の内容でセクシーな部分が弱いと気づいた彼女は、「初潮の日時」と「生理の周期」を発表するという、とんでもない手に出るんですよ。それを伝えられたファンはどうしたらいいんだっていう(笑)。
彼女が考えるセクシャルな要素が初潮や生理周期だったようですが、じつはこの頃のアイドル本のトレンドでもありました。
当時、山口百恵さんが人気絶頂で引退する間近に出した自叙伝『蒼い時』(1980年・集英社刊)に、初潮の記録が書いてあるんです。
〈一瞬、下腹部にチクッとさされたような痛みを感じた。次の瞬間、身内の熱が固まってころがり落ちた(中略)両の足の間に小さな朱色を発見した私は、すぐに母に告げた。母は、淡々と、それでも嬉しそうに笑って、「お赤飯たかなきゃね」と囁いた〉
これがきっかけで、「あのスターが初潮を書いたんだから、お前もやれよ」とスタッフが説得しやすかったんでしょうね。百恵さんは言うだけ言って引退しましたけど。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号