中国の習近平国家主席が今年7月1日、香港で行われる中国返還20周年記念式典に出席するのに合わせて、中国人民解放軍の香港駐留部隊を閲兵することが明らかになった。習氏は中国大陸での地方視察の際、軍部隊を視察しているが、香港の場合、50年間「1国家2制度」維持の原則から、地元住民を刺激するなどの理由で、習氏はこれまで軍の視察を行っていない。
今回は香港で青年層を中心に「独立派」が台頭していることから、「独立阻止」を明確にすることも狙い。軍を視察することで、万一の場合は軍事力を行使する用意があることを示し、独立派を牽制する意図が指摘されている。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が駐香港部隊の張仕波元司令官の発言として報じた。
張氏は「駐香港部隊のすべての元隊員が20周年記念行事に招待された」と明らかにしたうえで、「返還20周年を記念する行事の一環として、閲兵式が行われるのは標準的な慣行だ。中央軍事委員会の最終決定はまだだが、習主席の香港駐留部隊閲兵は実現するだろう」と指摘した。
香港の憲法ともいえる「香港基本法」では、「返還後の香港の防衛は中央政府が担う」とされ、香港での中国人民解放軍部隊の駐留は、中国政府の香港への主権行使の象徴とされる。だが、駐留軍は香港市民にとっても刺激的なであることから、軍が公式の場に姿を見せることはほとんどない。1年に1回、駐留軍部隊の駐屯地が市民に公開され、軍のパレードなどが披露されるぐらいだ。
また、習氏も国家副主席時代から香港を訪れているが、これまで駐留軍の視察は行っていない。これは、駐留軍の規模が小さいのと、香港滞在中の公務が多忙であること、また中国の最高指導者が軍を視察することで市民を刺激する可能性があるためだ。
今回の場合、習氏が軍を視察することについて、同紙は「独立派の存在を意識しているのではないか」と指摘。3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代=国会)でも冒頭、政府活動報告を行った李克強首相も「『香港人が香港を治める』『マカオ人がマカオを治める』という『1国2制度』を、継続して全面的に貫徹する」と強調しながらも、その直後に「『香港独立』に道はない」と強い口調で警告。こうした事情を鑑みても、習近平指導部は香港独立の運動が活発化することに神経質になっていることは間違いない。