『全部、言っちゃうね』──女優の告白本が世間を騒がせているが、過去を遡れば、数々のタレント暴露本が芸能界を震撼させてきた。プロインタビュアーでタレント本収集家でもある吉田豪氏に、埋もれている名著のなかの傑作についてきいた。
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比較的最近出たもので、傑作だと思ったのが石原真理子さんの『ふぞろいな秘密』(2006年・双葉社刊)です。本人は「芸能界のいじめの構造を何とかしたい」という思いがあり、当初は恋愛話なんか入れるつもりはなかったようですが、出来上がってみると恋愛話がほとんどで、いじめのエピソードはめちゃくちゃ薄かった(笑)。
世間的にも話題になったのは総勢13人もの有名人とのセックス遍歴。ドラマで共演した時任三郎さんや中井貴一さんらの実名を出してベッドの中を評価したのは前代未聞でした。なかでも明石家さんまさんに対しては〈彼は、ベッドの中でもいたって普通の男性でした〉と“低評価”を下し、その後、さんまさん本人がギャグにしていました。
この後日談を知れば、この本がもっと面白くなります。
僕がこの本を各メディアで取り上げていたら、石原さんから直接電話がかかってきて、編集サイドとの攻防戦をこんな風に明かしてくれたんです。
「ゲラをなかなか見せてくれなくて、やっと見た後に鉛筆で修正を入れたら、編集者が横から消しゴムで修正部分を消していくのよ!」って激怒していて。
ひどい話なんですけど、だから本が面白くなったんでしょうね。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号