7月の東京都議会選挙で本誌・週刊ポストの予測では、自民党や民進党の議席が半減する一方、小池百合子都知事率いる小池新党が、50~60の議席を獲得するとの状況になった。
都議選で起きている現象は「小池旋風」の追い風を受けた東京ローカルの動きではない。
東京の有権者は、まだ海の物とも山の物ともわからない小池新党であっても、既成政党の枠を超えた受け皿さえあれば、1票の力で「小選挙区は自民党が勝ち」「2人区は自・民で分け合う」という硬直化した選挙のお約束をぶち壊すことができることを、都議選を通じて全国に示すことになるだろう。
「敵がいないから永久政権だ」などと舞い上がっている国政における自民党は8人区で議席ゼロ、同時に、訳知り顔で政府を批判しながら野党第一党の座に安住している民進党も潰滅し、公明党も共産党も大きく議席を減らすという前代未聞にして痛快な選挙結果だ。
投票率、つまり有権者の参加意識も確実に高まる。「小池vs自民」となった2月の千代田区長選の投票率は前回より10ポイント以上アップした。有権者数5万人足らずの小さな区長選は全国ニュースになった。それをもたらしたのは日本の政治が変わるという期待感に他ならない。
この選挙によって、長らく政治に欠けてきた緊張感が生まれる。国政選挙でも、都議選と同じ現象をつくりだすことは決して難しくない。有権者の受け皿には、必ずしも全国的な政党組織は必要はないことを小池新党がハッキリ示したからだ。
小池都知事は都議選の準備を進めるうちにそうした有権者の意識の変化にいち早く気づいたようだ。これまで国政進出に慎重とみられていたが、いきなり都議選の先の「国政選挙」に向けた態勢づくりに舵を切った。
小池新党「都民ファーストの会」は国の政治について詳しく学ぶ国政研究会を立ちあげ、政治塾「希望の塾」の塾生から参加者を募集して選抜試験を行なう方針だ。従来の「都議選候補者養成コース」に加えて、「国会議員候補者養成コース」を新設する。
都知事選で「都連のブラックボックス」に勝利し、千代田区長選で「都議会のドン」を倒した小池氏が、都議選で既成政党をまとめてノックアウトしてみせれば、「選挙はいくらでも面白くできるんじゃないか」と全国の有権者の意識が変わる。
そのタイミングで小池国政新党“国民ファーストの会”を立ちあげる──というシナリオが浮かんでくる。
「7.2」都議選をきっかけに、ニッポンの政治は本当に大きく変わりそうではないか。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号