投資信託の信託報酬の引き下げ競争が激化している。信託報酬とは投信の手数料の一種で、投信を保有している間は、ずっとかかり続けるコストだ。投信市場の最新動向について、楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。
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投資信託業界の2016年の特徴のひとつとして、信託報酬の引き下げがある。特に、インデックスファンドの引き下げは顕著で、商品性が類似する上場投資信託(ETF)に接近したことで限界だと思われた。しかし、ここにきて、さらなる引き下げの動きが出て驚いている。
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった指数に値動きが連動するインデックスファンドは、ここ数年、自分で分散投資をする個人投資家の間でかなり定着してきた。そこで、各運用会社は、低コストのインデックスファンドをシリーズ化してアピールしている。新しく発売されるシリーズは、既存のシリーズよりも低い信託報酬であることをウリにしており、それが繰り返されることで引き下げが進んだ格好だ。
そんな中、2009年10月に登場した老舗シリーズといえる『eMAXISシリーズ』を運用する三菱UFJ国際投信が、おそらく業界初となる試みを発表した。主要なインデックスファンドの信託報酬について、他社よりも常に低くするという。つまり、他社が引き下げたら、追随してさらに引き下げる、ということである。何やら家電の販売を連想させるが、その大胆な発想は評価できる。
信託報酬は保有期間中にずっとかかる手数料で、投資信託のコストの中ではもっとも大きな負担となるもの。こうした動きがさらなる引き下げ競争につながるのか、注目したい。なお、eMAXISの新シリーズ『eMAXIS Slim』は、2月末から4本のラインナップでスタートしている。
よく、インデックスファンドについては、市場平均を上回るパフォーマンスを目指すアクティブファンドとどちらが有利か、という議論があるが、こと海外株式に投資するファンドの場合、インデックファンドを上回る運用成績を出すアクティブファンドは、見当たらないのが現状だ(国内株式にはかなりある)。
保有するポートフォリオが国内株式に偏っている人は、昨今の信託報酬引き下げの動きが、海外株式のインデックスファンドに投資するいいタイミングになるのではないか。