芸能

NHKドラマ『火花』 視聴率はどん底でも傑作には違いない

番組公式HPより

 ベストセラー小説の映像化、という経緯を踏まえると視聴率は物足りないのかもしれない。が、ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は「傑作」と断言する。

 * * *
 テレビのスイッチを切った後も余韻は続く。 心の奥の何かを、たしかに揺さぶられている。若い時に置き忘れてきた、大切な何かを。時代も場所も超えて、多くの視聴者の心を揺さぶる「青春のカタチ」。ドラマ『火花』(NHK日曜午後11時 制作Netflix)が、いきいきと描き出している。

 原作は、又吉直樹氏の第153回芥川龍之介賞受賞作、あの大ベストセラー小説。ところが、NHKで放送が始まると初回の視聴率は何と4.8%。第3話は1.5%に低下し、いわば数字的にはどん底状態。「声が小さくて聞き取れない」「物語の展開が遅い」「退屈」と酷評も聞かれる。

 しかし、このドラマは傑作に違いない。私はそう断言したい。そもそも視聴率の数字なんて作品の質を直接表すものではないけれど、このドラマの魅力が多くの人に伝わらないとすれば残念で仕方ない。

『火花』のストーリーは……若手お笑い芸人の徳永(林遣都)が主人公。天才肌の先輩芸人・神谷(波岡一喜)に惚れ込んで弟子になり、神谷の言葉を逐一記憶・記録していく。ライブを追いかけ行動を共にし、理想の芸人とは何なのか、表現とは何なのかを問い続け……。

 青春のみずみずしさと滑稽さが、同時に浮かび上がってきます。無垢な魂と、居場所のない浮遊感。大都会の中での、焦りととまどい。一話たった50分弱という短い時間なのに、気付けば『火花』の世界に引きずり込まれ主人公たちと一緒の空気を呼吸している──そんな錯覚を覚えてしまう。

 それくらい役者陣が素晴らしい。林遣都、波岡一喜、好井まさお、門脇麦……演技の大胆さ、細やかさ、迫力にはひれ伏したくなります。

 ただ演技が素晴らしいだけでは、このみずみずしい世界を伝えきれない。無垢な魂のロードムービーを表現するためには、独特な映像の工夫──長回し、町のロケの多用、映像にしかできない表現の追求が、必要だった。

【1】無垢な魂が途切れないための「長回し」

 カット割は通常より少なく、カメラを回し続けて撮っていく「長回しの技法」を活用している。

 カット割が少ない、ということは役者やスタッフ側の緊張感はいやでも高まる。長回しで撮影するためには、すべてのセリフ、段取り等を頭に入れて準備しなければ、成り立たないからです。

 ライブな雰囲気、切実さと緊張感、場の空気感、役者の躍動感といったものが鮮やかに立ち上る。このドラマのみずみずしさと、長回しという映像手法は響きあっています。

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン