J-REIT(不動産投資信託。以下、Jリート)市場は海外要因などで短期的な急落も予想されるが、比較的落ち着いた動きになっている。今後の展開についてアイビー総研代表の関大介氏が解説する。
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2017年3月現在、東証REIT指数は1800ポイント前後の高値圏にあるものの、Jリートの価格を今後盛り上げるような日銀の金融政策は現時点では見当たらない。今年は2000ポイントを試す展開は期待できず、海外要因による急落という変数も含め、日銀がインパクトの強い金融政策を打ち出さなかった2015年と同じような値動きになるのではないか。
Jリート市場は、政府・日銀の政策による効果や海外要因をダイレクトに受けやすい。振り返ると、2012年12月の安倍新政権の誕生前後から東証REIT指数は大きく上昇し、2013年1月4日に約1141ポイントだった同指数は黒田東彦氏が日銀総裁に就任した同年3月下旬に1700ポイント台に乗った。日銀は翌4月に量的・質的金融緩和を導入。2014年10月末に実施した追加金融緩和は、Jリート市場の時価総額が初めて10兆円を超える追い風となった。
この追加金融緩和によって、2015年1月には一時1990ポイントを超え、同年前半は1800~1900ポイントのボックス圏内で推移した。2015年後半は6月下旬から深刻化したギリシャ問題や翌7月の中国株暴落に加え、米国の利上げによる投資環境の悪化などの海外要因で9月上旬に一時1500ポイント前後まで急落する場面もあったが、その後回復し、1700ポイント付近を維持した。
日銀の金融政策がJリート市場で再び存在感を強めたのが、翌2016年1月29日に打ち出したマイナス金利政策導入決定だ。2016年は年初から1月下旬まで1700ポイント前後で動いていたが、決定後の翌営業日の2月1日に1848ポイントに達するなど短期間で大幅に上昇。とりわけ2~4月まで外国人投資家が旺盛な買いを入れて急騰した局面もあり、4月25日には1970ポイントと、2000ポイントに迫る勢いをみせた。
英国の欧州連合(EU)離脱が国民投票で決まった6月下旬に1700ポイント台前半まで急落したが、同月末には離脱ショック前の1800ポイント半ばを回復し、堅調に推移した。
このように2016年は「マイナス金利フィーバー」が強い追い風になったが、2015年は12月18日に金融緩和の補完措置を発表した程度で、2013年、2014年、2016年のような相場を一気に持ち上げる金融政策を日銀が打たない年だった。今年は日銀の手詰まり感が一層強まり、Jリート市場を盛り上げる金融政策を欠いた2015年の相場のように緩やかに値を下げていくイメージを私は描いている。