数多くの暴露本を読んできたプロインタビュアーの吉田豪氏。タレント本収集家として、本棚には幅広い年代の“名著”が並んでいる。その吉田氏が「不動の2トップ」と推す2冊のタレント暴露本について聞いた。
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1冊は1970年代から1980年代にかけてタレントや指揮者として活躍した、ダン池田さんの『芸能界本日モ反省ノ色ナシ』(1985年・はまの出版刊)です。
暴露本には“目的”があるものですが、この本は、「指揮者の自分をぞんざいに扱ったプロデューサーへの復讐」という、個人的な理由だけで出したもの。どうしようもないことしか書かれていないんだけど、邪気がなくて面白いんです。
例えば、スタジオで柏原芳恵さんに会った感想で〈彼女きっと生理だったのかもしれない。歌聞けばすぐわかる〉とか(笑)。ほかにも、テレビの偉い奴はたいてい歌手志望の女を食っているとか、アイドルなんて品行方正でもなんでもなくてヤリまくっている──なんて憤っているわりには、自分もアイドル志望のコとヤッちゃう描写があったり。お前も一緒じゃん! っていう(笑)。
暴露本を出したことで芸能界から干されてしまいましたが、本人はカラッとしていましたよ。
もう一冊が、長門裕之さんの『洋子へ 長門裕之の愛の落書集』(1985年・データハウス刊)です。
自分の女性遍歴を赤裸々に語り、芸能界の仲間を実名で斬ったもので、帯には〈芸能界のエンマ帖〉と書かれていた。冒頭から、若かりし頃に交際していた女優の扇千景さんとのセックス描写から入るのですが、
〈ぼくは彼女のなかで激情した〉
と、独特な射精表現で(笑)。しかも、その後のピロートークで〈私、結婚するの。だから、あなたとのことは、これっきりにしてほしいの〉と、振られてしまうという(笑)。
あまりに反発が強かったため、釈明会見を開き、改訂版が出されるのですが、その修正もいい加減で。扇さんとのセックス描写が、夢オチになってたり、〈愛川欽也 ダメ男の典型〉という文言が、〈愛川欽也 憎めないダメ男〉になってたり。
あとで本人に聞いたのですが、本を出すことが決まって、酒を飲みながら書籍のスタッフと無駄話をしていたら、その話のみを原稿にされたそうです。原稿チェックも間に合わない段階で見せられて、「しょうがないな」と出しちゃったら大問題になった(笑)。本人は「あのときは本当に参ったけど、振り込まれた印税がかなりの額で、これならいいかと思った」と笑ってました(笑)。
後日談も含めて、長門さんの本が「大賞」です!
※週刊ポスト2017年3月24・31日号