老眼とつきあっていくなかで“強い味方”となるのが「老眼鏡」だ。2016年の国内メガネ市場は5087億円(矢野経済研究所調べ)。そのうち老眼鏡が3531億円と大半を占めている。
老眼を自覚し始めても、多くの人は「まだ大丈夫」、「老眼鏡をかけるともっと老眼が進行するかも」と、見えにくさを我慢しがちだ。あるいは、「とりあえず」と100円ショップや格安メガネ店で販売されている安い既製品の老眼鏡でしのごうとする。
こうしたその場しのぎこそが「間違いの始まり」となる。老眼鏡購入の際には、まず眼科医に相談すべきだ。『人生が変わるメガネ選び』の著者で、梶田眼科の梶田雅義院長がいう。
「もちろん直接メガネ店を訪ねて老眼鏡を作ることもできますが、初期の老眼は白内障や緑内障などの眼疾患と症状が似ているので、まずは眼科で診察を受けるべきでしょう」
良いメガネ店と悪いメガネ店を見極めるのに、ひとつの指標になるのが、公益法人日本眼鏡技術者協会の「認定眼鏡士」資格だ。認定者は全国に7000人おり、HPから検索も可能だ。眼鏡レンズ専門店「れんず屋」の古屋和義代表はこう付け加える。
「専門知識も大事ですが、40代以上で『自分も老眼です』という店員を選ぶといい。20~30代の店員だと、勉強していても、経験がないため、本当に老眼になってみないとわからない悩みに気づかないこともある」
また、きちんと眼科医と連携が取れているメガネ店か否かも店選びの重要なポイントとなる。購入後も、老眼鏡の使用法にも注意が必要だ。
「わずかなフレームのゆがみでも焦点が合わせづらくなくなることもある。視界が悪くなり、老眼が進行したかと思ってメガネ店に相談に行くと、フレームを少し調節しただけで、また元通りに見えるようになったということは少なくありません。老眼鏡は定期的に点検すべき」(同前)
傷むのはフレームだけではない。ガラスやプラスチックのレンズは使っているうちに傷が付く。
「コーティングが剥がれたり、肉眼では分からない傷がついたりとレンズは日々劣化していくので、寿命は2年とされる。傷ついたレンズを使い続けると目の負担も大きくなるので、老眼も進行する。2年をメドにレンズを作り替えることを推奨します」(同前)
老眼は徐々に、そして確実に進行する。メガネだけでなく自分自身の視力の定期的な検査も必要だ。
相性のいい老眼鏡は、明るいシニアライフを過ごすための最良のパートナーなのだ。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号