歩行を助けるのに便利な杖を、外出が楽しくなるグッズとして紹介しているのが、杖やステッキの専門店『つえ屋』(京都市)。社長の坂野寛さんは、開業当時の思いをこう語る。
「介護用品としての日本の杖は、実用性を重視したものばかり。でも、ヨーロッパの杖には、ファッショナブルなもの、遊び心があるものなど楽しさがある。そんな杖を、日本でもっと紹介したい。そして、私たちに合うおしゃれで楽しい杖を作りたい、と思ったんです」(坂野さん、以下「」内同)
世界各国から集めた杖は店内に約5000本。在庫はなんと15万本に上る。なかでも人気なのは、3万5640円の「つえ屋 折りたたみカーボン杖」だ。
「カーボンファイバーは、軽くてしなりがあります。硬すぎる杖は、地面についた時に衝撃がそのまま体に伝わりますが、カーボンファイバー製は、衝撃を吸収するため、足腰の負担が緩和され、疲労を和らげてくれる。折り目のジョイント部分にも衝撃吸収作用があるんです。苦労したのは、カーボン素材にプリントを施す方法です。杖をファッション小物に仕立てたかったので、京都らしいデザインにこだわりました」
出来上がった杖は、店頭で1本1本検品している。
「杖は体に合った長さのものを使うことが大切です。短すぎると前屈みになるため腰痛や肩こりの原因になり、長すぎると腕が上がった状態になり、腕が疲れやすい。目安は身長の半分に2~3cm足した長さですね」(坂野さん)
『つえ屋』の杖は、長さは自分で調節できるものがほとんどだが、店頭でも調整してくれる。 操作もしやすいため、持ち歩けて、ワンタッチで杖に早変わりする。普段、必要のない人でも、階段や坂道を上がる時や、疲れた時に役に立つ。最近は、お土産として購入する外国人観光客も多いという。
開業後、坂野さんは視力が1.5から0.01まで低下する難病を患った。
「この経験が、杖を使う人の気持ちを改めて考えるきっかけになりました。私がモノを見るのに拡大鏡が必要なように、足腰が弱くなって歩きづらくなった人には杖が必要です。『転ばぬ先の杖』ということわざ通り、杖は安心を与えます」
気に入った杖で外出する楽しさが味わえる。
※女性セブン2017年3月30日・4月6日号