最愛の妻・奈緒さんを乳がんで失ってから約2年、清水健さん(40才)が16年のアナウンサー生活にピリオドを打った。妻が命に代えて守った息子を、次はぼくが命の限り守る番――その胸中には、父としてすべき大きな役割が芽生えていた。読売テレビ退社後、初のインタビュー。
清水さんは、2013年5月にスタイリストを担当していた奈緒さんと結婚。翌年、彼女のお腹に新しい命が宿ったがその直後、奈緒さんに乳がんが見つかった。ふたりは「子供も治療もあきらめない」ことを選択。2014年秋に元気な男の子が誕生し、奈緒さんは治療に専念。しかし、すでにがんは肝臓や骨などに転移しており、2015年2月11日、奈緒さんは29才の若さでこの世を去った。長男が誕生してから、わずか112日後に訪れた別れだった。
「“大切な人の「想い」とともに”をテーマに、講演に呼んでいただく機会が多くあります。まだまだ多くのかたにご心配をおかけしているんだなと強く感じます。でも、こんなぼくの言葉に一緒に涙を流してくれる人がいる。多くのかたが、いろんなことをグッと堪えていらっしゃるんです。だから、少しでも誰かの支えになるのなら、ぼくは伝えていきます。それが、どれだけつらくても。
ただ、ぼくが人生をかけて伝えていかなければならないこと、それは“ママがあなたを産むために命がけで闘って、どれだけあなたを愛して、どれだけ悲しくて悔しかったか”を息子に伝えること。それが、この先のぼくの人生でいちばん大事な仕事だと思っています。
実は、奈緒の姿は写真だけではなく、たくさん映像にも残してあるんです。息子が生まれてすぐに、沖縄の竹富島に家族3人で行った時のものとか、息子がまだ奈緒のお腹の中にいるときの、まだ見ぬわが子に対しての奈緒のメッセージもあります。
でも、それをいつ見せるべきなのかは、見当もつかない。そのタイミングっていうのは、きっと奈緒が教えてくれると思うんです。
正直なことを言ってしまえば、奈緒がぼくの横からいなくなってしまってから、ぼく自身もその映像を見られていないんです。“奈緒の声が聞きたい、奈緒に会いたい”って思う半面、見る勇気が出ないんです。