支度部屋で“あいつら”の気合が違う──ある協会関係者はそんな言い方をした。新横綱・稀勢の里のお披露目となった春場所は、モンゴル3横綱に序盤から土がついた。盛り上がりの立役者は、誰に対しても手加減しないガチンコ力士たちだ。
「たとえば、6日目(3月17日)の結びの一番で横綱・鶴竜と対戦した東前頭3枚目の松鳳山。支度部屋ではとにかく突っ張りからの立ち合いの稽古を入念に繰り返し、土俵に向かう頃には全身が紅潮していたほどです。土俵上でも鋭い突っ張りで相手を下がらせ、見事に金星をあげました」
稀勢の里の露払いを務める松鳳山は、対戦相手を負傷休場に追い込むほど本気でぶつかる“壊し屋”として知られる。春場所の土俵を面白くしているのが松鳳山らガチンコ平幕たちである。
「彼らの活躍には、17年ぶり4横綱時代到来の影響があるでしょう。場所前からガチンコ平幕たちは稽古場で“金星のチャンスが4度もある”と言い合って目の色を変えていました。金星1個につき、場所ごとに支給される報奨金が4万円上がるわけですから気合も入ります」(担当記者)
通算勝ち越し数や金星に応じて力士に支給される報奨金は、引退するまで加算されていく。上位陣との取組に常に死力を尽くすガチンコ勢にとっては、“稼ぎ時”の大チャンスが到来したわけだ。
その“ニンジン”のおかげか、10日目までで金星配給は5つを数えた。松鳳山に加え、蒼国来(3日目・対日馬富士)、勢(4日目・対白鵬)、荒鷲(9日目・対日馬富士)、嘉風(10日目・対鶴竜)とガチンコ平幕が実力をいかんなく発揮した。勢戦の翌日、白鵬は休場に追い込まれている。
※週刊ポスト2017年4月7日号