都市は時代によってその姿をダイナミックに変えるものだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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大きな声で自慢はできないが、一時、世界一の「性都」として世界にその名を轟かせたのが中国広東省の東莞である。もともと製造業で栄え世界からありとあらゆる工場が集積し、大量の出稼ぎ労働者が集まって発展した都市でもあった。工場を出すのは外国企業が主で、香港、台湾、日本、韓国だけでなくアメリカ、ドイツ、フランスなどから有名企業が名を連ねた。そして、現地に派遣された社員や出張族、または工場を視察に訪れた投資家などをもてなしたのが、夜の顔である東莞の性産業であった。
その「性都」として世界的知名度を誇った性風俗産業が警官約6000人を動員して行われた大規模摘発によって壊滅に追いやられたのは、いまから3年前の2014年2月のことだ。
当時、逮捕された性風俗産業関係者は1000人以上にも上り、捕り逃した関係者を指名手配にするほど執拗さは、習近平の本気度を示すものだと現地メディアでも大きな話題となった。
あれから3年──。東莞は、どうなっているのか。
先述したように東莞はもともと製造業で栄えた街である。その製造業も、中国の人件費が高騰したことで寿命を迎え、2012年までの5年間で、7万2000社が倒産してしまうほど斜陽は明らか。とてもかつての夢の復活など望める状況ではない。
では、どうしているのか。北京のメディア関係者が語る。
「あれだけ派手なネオンに彩られていたカラオケバー、マッサージパーラー、クラブや高級ホテルの建物はそのままです。中身だけを変えて、老人ホームや温室栽培の農業、それからネットカフェとなっていますが、現在、最も熱い視点が注がれているのが先端企業のインキュベーター(起業支援施設)としての活用です。まだ資金力のないベンチャーが香港や深圳から大量に移ってきて、かつてサウナやカラオケであった部屋で活動しているというのです」
驚くべき変身といわざるを得ないが、「風俗産業がなくなれば何もなくなる」といわれていた東莞も、やればできるということか。