近年にない盛り上がりを見せるセンバツ甲子園。逸材揃いの球児たちのなかで、将来の日本球界を背負って立つのは誰か。新著『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』が話題を呼んでいる柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。
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春分の日と重なった第89回選抜高校野球大会の2日目。満員札止めの甲子園から約10キロ離れた伊丹スポーツセンターの野球場にも、400人近い高校野球ファンが足を運んでいた。お目当ては早稲田実業(東京)の清宮幸太郎である。
試合のない早実は紅白戦を行なっていた。清宮ら主力組に対し、控え組のマウンドに上がったのは早実OBで、早大2年の左投手。清宮は第1打席、大学生を相手に右中間スタンドのスコアボード直撃となる特大の一発を放った。
「甲子園の試合の前に、これだけのお客さんの前で野球ができるのは幸せなこと。ホームランは追い込まれたあとのストレート。状態は上がってきている」
高校通算79本塁打。怪物1年生として騒がれた2年前の夏に比べて選球眼を磨き、ミスショットは明らかに減った。体重もこの冬の間に100キロを超え、怪物はさらに巨大化した。
「今年のセンバツは、清宮君の大会でしょう。飛距離は目を見張るし、スタンドへのボールの持って行き方を知っている」
そう語ったのは、3月24日に、1回戦で早実と対戦する明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督だった。
だが、大阪に彼と同等のポテンシャルを秘めた左の大砲が存在する。履正社の安田尚憲だ。188センチと身長は清宮を4センチ上回り、通算本塁打は49本。同校の先輩であるT-岡田(現オリックス)を彷彿とさせるがっしりとした体躯でありながら、やはり先輩の山田哲人(現ヤクルト)のような器用さも併せ持つ。
高校野球界の両雄は2020年の東京五輪を21歳で迎える。その時、侍ジャパンの4番に座っていてもおかしくない逸材である。