「CM」が何か分からない子供が出現しているというアメリカでの調査結果が、日本でも波紋を広げている。10歳未満の子供がいる家庭のうち、一般的なテレビを観ている家と、テレビがなく有料動画配信サービスのNetflixだけで暮らしている家を対象にした調査で、子供はCMが何か理解しているのか「分かっていない」回答が予想外に多かったのだ(Exstreamist調べ)。テレビがある家では8%であるのに対し、Netflixだけ観ている家庭では82%にものぼった。調査方法そのものが恣意的だとの指摘もあるが、CMが分からない子供が増えているのは事実だろう。
「いつかは、そういう日が来るだろうと思っていました」と話すのは、在京民放局の編成部員だ。
「僕が子供の頃は、自宅にいて暇だと誰もがテレビをつけたものです。でも今は、若い人ほど暇なときはスマホを観ている。有料動画配信サービスも安くなってきていますし、携帯キャリアとセットで加入できるものもある。我が家の子供たちも、妻のスマホで繰り返しアニメを観ています。そのせいか、放送日になっても『●●観たい!』とあまり言わないですね。自分が子供の頃は、放送日になるとわくわくした覚えがあるのですが」
NetflixやAmazonプライム、HuluやdTVなど、様々な有料動画配信サービスがある。YouTubeやAbemaTVなど無料の動画サービスが強制的にCM映像を視聴しなければならないのに対し、有料サービスの多くはCM映像そのものがない。もし、子供が視聴しているアニメやドラマなどの番組すべてが有料配信サービスだったとしたら、広告CMという存在を理解できなくなるだろう。
近い将来、TV向け広告CMの作り方が根本的に変わるかもしれない、と映像制作会社のディレクターはいう。
「今のところ、CM映像はテレビ向けの規格でプランを立て、作成し、ネット向けはあくまでその応用にすぎませんでした。でも今後は、CMが商品やサービスの宣伝だと理解しない若者が増えていくのは確実なので、テレビ向けではなくネット経由で観てもらえるものをということになる。どういうあり方が消費者にリーチするのか、ノウハウの蓄積がなさすぎて、どう作っていけばよいのか自信がないのが本音です。でも、やるしかないですね」