どんなに辛いことがあって私は負けない──そんな思いを持って生きてきた女性が半生を振り返る。千葉県の上村みどりさん(60才)の告白手記を掲載します。
〈本稿は、「自らの半生を見つめ直し、それを書き記すことによって俯瞰して、自らの不幸を乗り越える一助としたい」という一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました〉
* * *
私の過去は今の夫も知らないし、隣近所も、絵手紙を習っている仲間も誰も知らない。ひた隠しよ。
ほんのちょっとでも気を許すと、女ってすぐじゃない?「えっ、最初の結婚は35才って、それまで何していたの?」から始まって根掘り葉掘り。迂闊に答えようものなら、「高校はどこ?」「最初、どんなところに就職したの?」…と、逃げようのないところを選んで、畳みかけるように聞かれるんだから。
気のせい? いや、違うね。自分に後ろ暗い過去がある人に限って、他人の触れてほしくない傷に敏感っていうか、独特のにおいを嗅かぎつけるんだよ。私だって“元同業”はすぐにわかる。だからそういう人とは距離を置いて、絶対に近づかないもの。
◆小3のときに初潮。男の担任の腕にぶら下がっていた
私が生まれたのは北関東の奥地。田んぼと畑ばっかりの田舎町。そこで稲作農家の次女、挟まれっ子として生まれたわけ。
「お姉ちゃんはおりこうさん。みどりちゃんはかわいい子」
物心ついたときからずっと、まわりの大人たちはみんな同じことを言ったよね。
「そしたらみどりは目をパチパチさせて、首をちょこっとこう傾げて、かわいいでしょって顔するんだよ」
祖母はいっつも私の真似して笑っていたっけ。でも母親は笑わなかったね。「どんな女になるんだか空恐ろしいわ」といや~な顔していた。父親は、う~ん。いつも野良着を着て働いていたことと、お風呂上がりにビールを飲んでプロ野球を見ていたことしか覚えていないわ。
子供の頃から私は、洋服や髪形にものすごく興味があってね。鏡を見るのも大好き。同級生の誰より「かわいい」と言われたかったのよ。
色気づくのも早かったなぁ。小3のときにはもう生理があったし、無邪気なふりをして男の担任の腕にぶら下がってた。そうすると、絶対にえこひいきしてもらえるんだもの。そんなことばかり考えている子供が、まともに勉強なんかするわけないよね。高校は県下で最低の、いわゆる答案用紙に名前さえ書けば入れる女子校よ。