ファッションはお金でもセンスではなく「ロジック」である。ゆえに、ロジックを学べば、誰でもオシャレになれる──。男性ファッションを感性から論理の世界に落とし込み、熱烈な支持を集めるMB(エム・ビー)さん。メンズファッションのバイヤーであり、オシャレになるためのサイト『現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法 KnowerMag』を運営、有料メールマガジンを配信するなど、ファッションの伝道師として広く活動している。
2月には、新刊となる『ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく スタメン25着で着まわす毎日コーディネート塾』(集英社)を上梓した。オシャレをロジカルに語る新しい存在として注目を集めるMBさんのインタビュー、【後編】をお届けする。MBさんのオシャレ観、仕事観、今後の野望とは?
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◆小6で父が倒産、「お金を稼ぐ」とは何かを考えるように
──MBさんがファッションに興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。
MB:きっかけは兄の影響ですね。それで中学生くらいからファッションが好きになったんですけど、僕、自分で言うのもなんですが、小さい頃から“良い子”だったんです。友達に貸すためにファミコンを学校に持っていくだけで、あぁ悪いことをしていると、ビクビクして顔面蒼白になるような子供だった(笑)。
で、オシャレって、どちらかといえば不良とか、大人から“悪い子”と呼ばれるようなタイプが得意な分野じゃないですか。自分が対極にいたからこそ、そうした風潮が許せなかったんです。良い子でもオシャレになり得るはずなんだと。ヘンな反骨精神みたいなものも、オシャレ好きに拍車をかけたように思います。
──ロジカルな語り口が人気のMBさんですが、何が、ご自身のロジカル思考を培ったと思われますか。大学では経済学を学んだというお話もありましたが(【前編】参照)、その辺りも役に立っているのでしょうか?
MB:そうですね、ドラッカーは好きで、大学時代、よく読みました。ただ、頭は良くないですし、それがどのくらい関係しているかは……。一つ思うのは、僕の家は小学校6年生くらいまで裕福だったんです。それが父の会社の倒産によって一転しました。家を失い、借金取りが毎日来るようになり、母親はいつも泣いている。自分はどうなってしまうんだろう、あんなに幸せだったのに、なぜこんなことが起きるのだろうと、考えずにはいられなかった。早い時期から社会の仕組みなどを自分なりに考えてきた経験が、今につながっている側面はあると思います。
◆ユニクロでOKのもの、NGのもの
──新刊では「ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく」と謳っています。ユニクロや無印など、手に取りやすいブランドを積極的に紹介されるのはなぜでしょうか。
MB:ファッション初心者へのわかりやすさ、手に取りやすさは意識しています。とはいえユニクロや無印にこだわっているわけではないし、無理におススメすることも絶対にしない。この本も“ほぼ”を付けないほうが売れると思うんだけど、それはできませんでした。ユニクロではダメだと思うものがあるからです。たとえば、革靴。男性は基本的に3万円以下の革靴は履かないでほしいと言っています。シンプルな革靴にこそ、投資してほしいと。
できるだけファッションの間口は広げたいんです。そのために安めに手に入るブランドを紹介しますが、同時に、ファッションの奥深さも見せたいんですね。ユニクロですべてそろえてOK、ということがやりたいわけではない。だからブログで、7万円する海外ブランドのカーディガンを、こういう理由があって7万円するんだよ、と、紹介したりもします。多様性のなかに深さがある男性ファッション文化を日本に根付かせていくのが、今、僕がやりたいことなんです。