トランプ政権の誕生に続き欧州の選挙など波乱要因が目白押しの2017年の金融市場。その中で金市場はどう動くのか、マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役の亀井幸一郎氏が解説する。
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2017年上半期の金相場については、下値1150ドル、上値1350ドルのレンジを予想している。欧州の国政選挙の結果などで波乱の芽が拡大した場合、昨年の高値1377.50ドルを上に抜けていく可能性もある。
米大統領選でトランプ氏が勝利した昨年11月以降、株高・ドル高・金利高のトランプ・ラリーの煽りを受け、金が売られた局面もあった。開票中に1320ドル台をつけた金価格は翌月、一時1120ドル台まで下落したが、下値が深まった要因には、例年秋~12月に高まるインドの婚礼シーズンに合わせた実需の買いが不在だった影響もある。
インド政府は昨年11月上旬、高額紙幣の1000ルピー札と500ルピー札を突然廃止し、新紙幣2000ルピー札を発行した。ところが新札の印刷が追い付かず、交換が進まなかったため、市中で著しい現金不足が生じた。インドはキャッシュ社会であり、結婚式費用も現金で支払う。その現金が手元にないため、結婚式を先送りした人々も多かった。
インドでは花嫁に親や親類が金を贈る伝統があり、先送りされた需要が春の婚礼シーズンの今年4~5月に高まることが予想される。その時期にはフランス総選挙もある。今年上半期において最も米ドル建ての金価格が高値を出しやすいタイミングは、政治的要因やインドの実需の買い動向が重なる5月になるのではないか。
日本国内の円建て金価格は米ドル/円相場の影響を受ける。このため、米ドル建て金価格の動きとは対照的に、国内金価格はここ数年あまり動いていない。税抜きで1グラム=4200~4400円程度で滞留しており、金融資産の「保険」となる避難資産として金購入を検討してもよい水準といえる。金現物を持つことにこだわらないなら、コストが比較的安く、小口から買えて使い勝手がよい金ETF(上場投資信託)が向いている。
今後、日米通商交渉の絡みで、トランプ政権から円高圧力がかかる可能性もある。円高に進み、為替要因で国内金価格が下がった場合、日本人にとっては割安で金を買うのによいタイミングとなるだろう。