国のトップが変われば為替相場にも影響するもの。ドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任したのを受けて、米ドルはどのように動くのか? バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が解説する。
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米国の大統領が替わり、自分の存在を誇示しようとする新・大統領は、今回のトランプ大統領に限らず、過去にもありました。それによって、大変な事件が起こり、為替相場にも如実に影響が現われたことがありました。それは、2001年に就任したジョージ・ブッシュ大統領の時です。
◆ジョージ・ブッシュ政権下で起きた大事件
ジョージ・ブッシュも自分の存在を誇示しようと、特にイスラム圏に対して圧力を加えたところ、オサマビン・ラディン率いるテロ集団アルカイダが、噛みつきました。そうして起きた大事件が、2001年9月11日の米同時多発テロです。
アルカイダは、米旅客機をハイジャックし、2機はニューヨークのワールド・トレード・センターに突入、もう1機はワシントンD.C.にあるペンタゴン(国防総省)に突入。最後の1機は、乗客の抵抗により墜落しました。
特に、ワールド・トレード・センターの突っ込んでいく旅客機は、映画のワンシーンを見ているようで、全く実感がわきませんでした。そして、あの巨大なツイン・ビルが、崩壊していきました。
この惨状に、ブッシュ政権はヒステリックになります。その行動のひとつの例が、ドイツのメルケル首相の携帯電話にアメリカが盗聴器を仕掛けていた事件です。
2013年にこのことが発覚した際、オバマ大統領は知らなかったと釈明しました。盗聴器を仕掛けられたのが9.11の事件後の2002年で、メルケル首相だけではなく、世界の主だった要人の電話あるいは携帯電話に盗聴器が仕掛けられていたことものちのち発覚しました。
◆2001年の9.11が作った為替相場の大トレンド
話は前後しますが、2001年の9.11 から半年近く経った2002年の2月頃から、投資家が動き始めました。ここでいう投資家とは、政府系ファンド、年金の運用機関であるペンションファンド、生保など機関投資家、そして中央銀行などを指します。
彼らは、公的あるいは準公的のお堅い人達ですので、当面の投資方針を決定するのに、相当な時間を要します。この場合であれば、事件が前年9月に発生し、動き出したのが2月ですから半年近く検討した後、ドルから資金逃避するということで、動き出したわけです。
彼らの動かす額はかなり大きいため、世界第1位の取引量を誇る通貨「米ドル」から資金を移そうと考えたとき、受け皿になれるのは世界第2位の取引量をもつ通貨「ユーロ」ぐらいしかありません。
そして、いったん彼らの資金が「米ドル→ユーロ」へと動きだすと、怒涛の勢いで、米ドルからユーロへ一方向のフロー(資金の流れ)が発生しました。この流れ(ユーロ/ドルの買い)は6年間続き、ユーロ/ドルはその間に約7500ポイントの上昇を見ることに。
大統領が自らを誇示しようとしたがために、大惨事にはなるし、またドルからの資金逃避が大々的に起きたわけです。そして、今回アメリカファースト(アメリカ第一主義)を唱えているトランプ大統領も、下手をすると、同じような事態に遭遇する可能性は否定できません。
【プロフィール】水上紀行:1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)に入行。1983年よりロンドンや東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。バーニャ マーケット フォーカスト代表。