ライフ

徳川家康 老獪な策士イメージだが「験担ぎ大好き」だった

関ヶ原で勝てたのも壬申の乱にあやかったおかげ(写真:アフロ)

 歴史上の人物について私たちが持つイメージは、往々にして学校で習った内容や、小説やテレビドラマなどで描かれる姿そのものだったりする。一方、歴史研究の世界では新たな史料が発見され、これまでの“常識”が覆ることがある。「徳川家康」は信長、秀吉に次いで天下を統一し、その後260年余続く江戸幕府の礎を築いた。織田家や今川家の人質となりながら戦国の世を生き抜き、天下人へと成り上がった。敵対する勢力に謀略や政治闘争を仕掛ける策士としてのイメージが強いが、前衆議院議員の村上政俊氏が「素顔」について指摘する。

 * * *
 私の専門は国際政治であり、代議士として議会にも身を置いていたが、過去の為政者の思いを知ることは現代の我々にも大きなヒントになると考えている。そうした観点からは(一大阪人としては感情的なしこりはあるが)徳川家康はとてもよいサンプルだ。

 家康といえば冷徹な策士のイメージが強い。天下分け目の関ヶ原では小早川秀秋の寝返りを画策して成功し、勝利の流れを手繰り寄せた。大坂の陣では方広寺の釣鐘の銘文にイチャモンを付けて豊臣家を滅ぼすきっかけを自ら作り出すなど、目的のためには手段を選ばない姿勢を貫いた。

 権謀術数に長けて“老獪な策士”と呼ばれ、人智を超えた力などとは無縁と思われがちな家康が、実は「験担ぎが大好きだった」といえば意外に思われる読者も多いだろう。

 家康の場合、そもそも戦からして神仏頼みだ。信仰した愛宕権現は勝軍地蔵菩薩のまたの姿であるが、「勝」という字にあやかろうとしたストレートさには近寄り難い偉人というより親しみ易さが滲む。

 家康は先達の中でも特に源頼朝を尊敬し鎌倉幕府の正史「吾妻鏡」を愛読して範とした。平治の乱に敗れた源義朝の嫡男でありながら、頼朝が命を長らえて幕府を樹立できたのは、平清盛が頼朝の命を助けたからだ。伊豆の流人から再び身を興した頼朝の姿に、家康は自らの人質時代を重ね合せていたかもしれない。家康は大坂の陣の際に、この清盛の脇の甘さと頼朝の強運が当然念頭にあっただろう。清盛の轍を踏むまいと。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン