全国で40以上もの百貨店が次々と閉店していく中、『大丸東京店』は売り上げが右肩上がりだという。そこには百貨店の常識を破る戦略があった。一般的にデパートでは1階は化粧品売り場になっていることが多いが、大丸東京店では1階をスイーツ売り場“デパイチ”にしたのが業界初。しかも1000種類ものお弁当が並ぶ「お弁当ストリート」もある“デパ地下”、通称『ほっぺタウン』も含め、食料品の売り場が、2フロアにまたがる。
◆“シャワー”じゃなくて“噴水”
以前のデパートでは、大食堂や催事場といった集客力のあるコンテンツを上の階に配置することで、上の階へ一気に人を集め、下の階へ誘導していく“シャワー効果”を狙っていた。
しかし大丸は違う。こうしたデパ地下・デパイチの集客で一気に上の階へも人を誘導するという“噴水効果”。
それに一役買っているといえるのが、地下1階と1階をつなぐエスカレーター4基。昇降を同じ場所に設置することで回遊性を高めている。
◆掟破りのファストファッション展開
デパート業界の売上激減の主な要因は衣料品の売上減だといわれている。そんななか大丸東京店はファストファッション『ZARA』をいち早く誘致し、衣料品の売り上げも好調だというのだ。
「百貨店なのに!?といわれる由縁ですね。東京店は大丸他店に比べて、近隣にお勤めのかたや出張や旅行で来られたお客さまが多い傾向にあります。新幹線の待ち時間にも買い回りできるような、勢いのある人気ブランドに出店いただきました。
デパートの高齢化が問題視されるなか、20代の利用率が1%増加しているのは、若返りが図れていると考えています」(大丸東京店PR広報の宮川香織さん)
余談だが、大丸はこうした地域や立地の特性を徹底的にリサーチすることに長けている。
著書に『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)がある、放送作家の寺坂直毅さんが言う。
「神戸の震災後は、他のデパートが突貫工事で修繕したり、ちょこちょこと修繕しているなか、大丸だけは“これを機にもう一度魅力的な大丸を作り直そう”と、元居留地だったところを買い取り、神戸の街ごと修繕していたのが印象的です」
ターミナルデパートゆえ、時間がない客が多い。すばやく、的確に接客するのが第一の課題だ。
「ですから、スピーディーに人気のものがご提案できる工夫をしています」(宮川さん)
1階には、季節ごとに展示を変える「ランキングボックス」があり、お弁当やお菓子など売れているものを買いたい客にランキングで展示している。
ファミリーにも喜ばれるのは、スケルトンのエレベーター。駅舎が見渡せる眺望は大丸ならではと好評だという。各階でデザインを変えているトイレも、知る人ぞ知る大丸らしさという声も。
※女性セブン2017年4月13日号