新横綱・稀勢の里の大逆転優勝で幕を閉じた大相撲春場所。13日目に稀勢の里が負ったケガの状態に注目が集まった。
「14日目、鶴竜に敗れた後、稀勢の里はわざわざ東京から馴染みのトレーナーを呼んで施術を受け、医師に痛み止めの注射を打ってもらっていた。
周囲からは千秋楽の出場も危ぶまれていたが、実際は骨折や筋断裂といった本当に深刻な状態ではなく、直径20センチ以上の内出血があったものの、千秋楽の朝にはテーピングもせずに稽古場に出てきた」(後援会関係者)
そして迎えたのが千秋楽の土俵だった。右膝に古傷を抱えていた大関・照ノ富士は、本割の土俵では突き落としを残せず、優勝決定戦では稀勢の里の捨て身の小手投げに土俵際で逆転を許した。
表彰式での土俵下インタビューで、稀勢の里は男涙に「見えない力が働いた」と語ったが、最後の最後までガチンコ場所ならではのドラマだった。
「もともと八百長相撲が蔓延し始めたのは、最後まで諦めずに土俵際でもつれるとケガが多くなるので、それを避けたいという空気があったから。手負いの者同士が千秋楽にぶつかって優勝が決まるのは、ガチンコの証左。何よりも昇進場所優勝は、横綱になるのに誰にも借りがなかった大鵬、貴乃花、そして稀勢の里の師匠である隆の里の4人しかいない。稀勢の里は名実共にそのガチンコ横綱に並んだ」(同前)
来場所はその稀勢の里が東の正横綱の地位に就く。途中休場だった白鵬は、西の張出横綱。支度部屋で稀勢の里の下座に座る場面も出てくる。プライドの高い白鵬の巻き返しはあるのか。ガチンコ勢が一層、土俵を白熱させるのか。角界の勢力図は大きく塗り替えられようとしている。
※週刊ポスト2017年4月14日号