稀勢の里の負傷と再逆転優勝というドラマもあって、大相撲春場所千秋楽の瞬間最高視聴率は30%超を記録。近年稀に見る盛り上がりとなったが、ガチンコ場所の裏ではこんな事件も起きていた。
春場所の支度部屋でのこと。細長い室内は一番奥がコの字状の一段高い板の間になっている。東の支度部屋では奥の正面に正横綱の白鵬がまず陣取り、向かって右側に張出横綱の日馬富士が、左側を東の大関・豪栄道が占めるといった具合に、番付の高い順に奥から陣取っていく。
「力士が東西どちらの支度部屋を使うかは、その日の取組によって移動する場合もある。番付表で同じ東方にいる力士同士が対戦する時は、番付の低い方が反対側の支度部屋へ移動する決まり。関係者の間で話題になっていたのが初場所カド番で負け越して大関を陥落した琴奨菊の動きでした」(スポーツ紙デスク)
日馬富士と当たる初日、東の関脇・琴奨菊の姿は西の支度部屋にあった。
陣取った場所は横綱・大関が座る場所からは離れた手前側だったものの、「付け人がそこに逆さにしたビールケース(瓶が20本入るプラスチック製)を2つ並べ、上に座布団を重ねた。板の間の上に椅子のように座れるようにし、琴奨菊がそこに腰掛けた」(同前)のである。
なぜこれが話題になったかというと、このビールケースを椅子にする座り方は大関以上の力士にのみ認められるのが慣例だからだ。
「関脇以下は板の間の上にゴザと座布団を敷くだけです。“今場所はまだ大関に半分足がかかっている”“すぐに返り咲く自信がある”というつもりだったのでしょうか。支度部屋は関係者の出入りが多いですから、琴奨菊の様子を見て“あれ?”という顔をしている人は少なくなかった」(別のスポーツ紙担当記者)
とはいえ14日目の対照ノ富士戦で6敗目を喫し、大関復帰はならず。来場所、琴奨菊のビールケース椅子が姿を消すことになるのか、関係者の間で密かな注目ポイントになってくる。
※週刊ポスト2017年4月14日号