現役の大学生でなくても講義を受けられる「公開講座」や「科目聴講生」などの制度が話題になっているという。ほとんどの講座は有料だが、もちろん受験勉強や入学金なども必要なく、気軽に受けられるのが特徴。15年前は全国で7000講座だったのが、現在ではその倍となる1万4000講座に増えているという。
とはいえ、教える立場からすると公開講座は独特の空気があるようだ。立教大学(東京・豊島区)で教鞭を執る精神科医の香山リカさんは、現役の学生を相手にする時とは全く違う緊張感があるという。
「立教大学では『立教セカンドステージ大学』という名前で50代以上で勉強をし直したい生徒を受け入れています。彼らの中に授業に遅れる人、ギリギリに入室する人はいません。それに、若い学生はわりと教員の言うことをうのみにしがちですが、中高年の受講生からは、こちらが話したことについて、『それは本当なんでしょうか』『どういう意味ですか』と鋭い質問が飛んできます」
授業によっては、現役の学生と一緒に学ぶものもある。同大学事務室の足立寛さんは「そんな時、教室の最前列はセカンドステージの受講生が積極的に座るので、学生たちから最前列は『シルバーシート』と呼ばれているようです」と笑って明かす。
そして学ぶことに積極的な彼らは、現役世代と違って、休講と聞くとガッカリする。前出の香山さんが言う。
「以前、私の都合で1時間早く授業を終えなければならない時があり、『課題を出してやっておいてください』とお願いしたことがありました。若い学生ならラッキーという感じなんでしょうが、『1時間分の補講をしてほしい』という要望が多く熱心さと学びたいという熱意に感服しました」
そういった受講生側の学ぶ姿勢に、教える側という立場にありながら日々学ばされている面もあると香山さん。