「申し訳ないが、俺は大学出身のキャッチャーは信用していない。高校を卒業する18歳から22歳頃までの4~5年間が、一番大事な時期なんだよ」
野村氏によれば、その時期は「野球の基礎作りの段階」であり、プロで過ごすことが重要だという。
「大学、社会人では、その場しのぎの配球をさせることがある。俺はシダックスの監督もしていたから分かるけど、1回負けたら終わりのトーナメント戦だと、無難な配球ばかり教わると、それがクセになってしまうんだよ。プロ野球80年の歴史を見ても、名捕手と呼ばれる人には高卒選手が多い。森祇晶(巨人)や岡村浩二(阪急)、谷繁元信(中日)。俺を含めてもいいかは分からないけどね(笑い)。
キャッチャーには、観察力、分析力、洞察力の3つの力が要求される。まず相手打者をよく見て、攻め方を考え、選んでいくということだ。リードも(1)ピッチャー中心、(2)相手バッター中心、(3)状況(アウトカウントや走者など)中心の3つが基本。だが、WBCのような国際試合では相手打者のデータ、つまり分析の材料が少ない。結局、(2)の打者中心では考えられないから、(1)のピッチャー中心で組み立てるしかないわな。それでは本当の実力はわからないよ」
WBCでの小林の活躍は、差し引いて考えるべきという指摘だ。