咽喉頭(いんこうとう)がんは、扁桃腺(口蓋扁桃、こうがいへんとう)付近から、その奥あたりのいわゆる「のど」に発生する希少がんだ。のどは食物の飲み込みや発声、呼吸などを担っている器官が集まっており、治療の質を落とさずに後遺症を極力減らす治療が求められている。
従来の治療は、放射線と外科手術が主に行なわれてきた。早期がん治療では、放射線治療が実施されることが多いが、がんの治療が成功しても、放射線の副作用で唾液が出なくなり、味覚異常などに悩まされる患者が多い。また、手術では首から顔にかけて大きな傷が残ることもある。
さらに飲み込むための筋肉を切ることで、嚥下障害が起きることがあった。そのため機能の障害を減らす治療として研究が進んでいるのが、手術支援ロボット・ダヴィンチを利用した治療だ。
東京医科大学病院耳鼻咽喉科頭頸部外科の清水顕臨床准教授に話を聞いた。
「ダヴィンチは、口から2本の鉗子のついたアームと径の細い内視鏡を挿入し、3D画面を見ながら、指に装着したコントローラーを動かして病変部を切除します。内視鏡手術の一種ですが、入り組んだ口の中にある腫瘍を、目の前で見て摘出することができるように作られているので、必要な部分だけを摘出することができます。大きな血管や食べることに関係する筋肉などの損傷を最小限に留められる手術です」
手術支援ロボット・ダヴィンチは、日本では前立腺がんに対する治療が保険承認されている。口の中からアプローチする治療としては経口腔的内視鏡手術があるが、鉗子などの手術用具がまっすぐのため、狭いのどの奥にはうまく届かない。一方、ダヴィンチは手術用具に関節があり、口の中でも自由に操作できる。