ビジネス

シャープの賞与ポイント制 本当に社員のやる気は高まるのか

「ボーナスは給料の○か月分」の時代は終わった

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って経営再建中のシャープ。先ごろ「業績が回復している感謝のしるし」として、国内に勤務する社員1万9000人余りに一律3000円を現金支給する“大盤振る舞い”を明らかにしたばかりだが、今後、社員の賃金水準も揃って上向きになるかといえば、答えはNOだ。

「信賞必罰経営」を掲げている鴻海出身の戴正呉社長の方針は至って明確。〈できる社員にはいくらでもカネを払うが、できない社員はそのまま〉というもの。会社業績に貢献した人にのみ報いる仕組みである。

 それはボーナス(賞与)の査定にも大きく反映されそうだ。

 今冬のボーナスから全社員を対象に「ポイント制度」を導入し、営業成績や製品開発などで高い実績を残した社員には最大8か月分のボーナスを支給する一方で、もっとも貢献度の低い社員は年1か月にとどめる。

 ボーナス格差をより広げるこの制度、シャープの狙いは何か。

「戴社長も明言しているように、社員のやる気を高めるのが最大の目的。シャープは一連のリストラや買収劇によって、優秀な社員が他社に引き抜かれるなどして、いまも人材流出が止まらない。

 そこで、残った社員をできるだけ引き止めながら、モチベーションを上げるために給料やボーナスに幅を持たせ、頑張れば頑張った分だけ支給額に跳ね返る制度に変えた」(経済誌記者)

 社員の待遇を含め、鴻海に買収されたシャープが名実ともに「外資系企業」になったことの表れでもあるが、日本企業でもすでに会社業績や個人の実績に応じてボーナス支給額が変動するのは当たり前の時代に入りつつある。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が話す。

「2000年前後から多くの企業が導入した成果主義によって、月給とボーナスの決め方は大きく変わってきています。

 経営側は毎年のように月給をベースアップすると固定費が膨らむ一方なので、ある程度年功的な賃金体系を残しながらも、それ以外は会社業績や部門別業績、社員個人の職務・成果などに応じて“格付け”し、月給よりもむしろボーナスで差をつけようという考えです。

 例えば、同じ課長でも、より会社業績に直結する重要な仕事をしている人はグレードが上がり、給与水準も自動的に高くなります。ボーナスではそこに会社が掲げた成果、シャープでいえば実績ポイントが加算されて支給額が決まっていくのです」

 だが、このシステムで本当に社員のモチベーションが上がるのか、疑問も沸く。日々頑張って自分なりの成果を出していても、陽があたらない部署もあるからだ。溝上氏もいう。

「企業には業績好調な花形部署ばかりではなく、今後の成長性を期待している部門や再建中の事業もあるでしょう。いわば短期間では成果が見えにくい職務で賃金やボーナスのグレードを上げるのは至難の技といえます」

 さらに、そうした部署に配属されている若手社員たちの賃金格差も深刻な問題だ。

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン