盧武鉉政権以来、約10年ぶりの左派・革新政権が韓国に誕生しようとしている。保守系の朴槿恵政権下ですら、産経新聞の加藤達也・元ソウル支局長は大統領に対する名誉毀損で起訴され、出国停止となった。これが左派政権誕生となれば、敵対勢力には何でもありになるのではないか、と産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は危惧している。その黒田氏が韓国の今後を占う。
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文在寅氏の語録には盧武鉉ばりの反米・親北が目立つ。米中相手の「均衡外交」論がそうだし、「米国にはノーと言えなければならない」などというのは「米国を怒らせてもいいではないか」と意気軒昂だった盧武鉉そっくりの反米パフォーマンスだ。
文氏は北朝鮮については対決より「対話と交渉」を繰り返しているし、朴槿恵政権が閉鎖を断行した開城工業団地の再開など制裁緩和を唱えている。さらに「大統領になったらまず北を訪問したい」とさえ言ったことがある。金大中、盧武鉉に次いで南北首脳会談の早期開催に熱を上げるに間違いない。
となると、日米韓の対北歩調の乱れは避けられない。李明博・朴槿恵の保守政権10年との差別化には、反米パフォーマンスと対北宥和策が最も分かりやすくカッコいい。
ただ文在寅氏は反米・親北体質であるがゆえに、大統領になった後はもちろん、まず大統領になる前に相当な抵抗に遭うだろう。朴槿恵弾劾要求の“ロウソク・デモ”に対抗する弾劾反対の“国旗デモ”に終始、星条旗が登場していたことはその象徴だ。朴槿恵弾劾がイコール文在寅・反米政権につながることに対し右派・保守派に深刻な危機感が広がっているからだ。