経営危機の続く東芝。米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)を法的整理したことで、最終赤字が1兆円を超えるとの予測も出る中、現経営陣にできることは、半導体を筆頭に“実にならない事業”は残らず売却し、少しでも負債を減らすことしかないのだろう。
そんな状況下で、次なるリストラ候補に挙がっているのがテレビ事業だ。
東芝のテレビといえば、1960年に日本初の国産カラーテレビ(21型D-WE)を販売した老舗で、1990年代には高音質や二画面機能など付加価値をつけたブラウン管テレビ「BAZOOKA(バズーカ)」で一世を風靡したこともあった。
だがその後、多メーカーが入り乱れた〈薄型化〉〈液晶化〉〈大型化〉の開発競争の波に乗り遅れ、いつしか東芝ブランドの存在感は薄れていった。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がいう。
「ブラウン管ではソニーが開発した平面の『トリニトロン』が主導権を握り、長らく“テレビはソニー”の時代が続きました。2000年代の薄型液晶化になってからはシャープの『AQUOS(アクオス)』やパナソニックの『VIERA(ビエラ)』などの人気に押され、なかなか東芝製テレビのシェアは高まっていきませんでした」
それでも2006年に発売した新ブランド『REGZA(レグザ)』は、テレビの基本性能である画質にとことんこだわった“本物志向”で起死回生を狙うはずだった。ところが、今度は海外メーカーの台頭による価格競争に呆気なく敗れてしまった。
「東芝に限らず、日本の電機メーカーは一様に韓国や中国、台湾メーカーが大量投入する低価格液晶テレビに席巻されて低迷。高コストな液晶パネルの自社生産を断念せざるを得なくなりました」(安蔵氏)
結局、東芝も複数メーカーからパネルを調達するとともに、海外のテレビ生産・販売から撤退。国内で残るテレビ事業も子会社に移すなどスリム化を目指したものの、赤字体質から抜け出すことはできていない。直近の2016年4~9月期決算では、売上高が前年比43%減の279億円、営業損益は105億円の赤字に喘いでいる。
こうした苦境をみる限り、テレビ事業の売却も仕方ないのかもしれない。だが、意外にも販売の現場では、東芝のテレビ販売がまったく振るわないどころか、家電量販店などでは新型レグザの前で熱心に販売員の話を聞く消費者の姿も見受けられた。
消費者の中には、「テレビは東芝製ばかり買ってきた」という東芝ファンや、「何とかツブれずに頑張ってもらいたい」という支援の意を込める人も。大手家電量販店の販売員はこう説明している。
「お客さんはみな東芝の経営が大変なことになっているのは知っていますが、すでに中国企業に売られてしまった洗濯機などの白物家電も、東芝のブランドや品質はそのままに売っていますし、アフターサービスも変わりません。テレビも経営母体が変わったからといって、すぐに購入後のサービスが受けられなくなることはありません」
大手商品レビューサイトでは、液晶テレビのカテゴリーの中で売れ筋、満足度ともに上位にランクするレグザシリーズもあるほどだ。