厚生労働省「人口動態統計の年間推計」によれば、2015年の死者数は約130万人にのぼり、2030年には160万人を突破する見込みだ。とくに都会では孤独死が急増し、2030年には孤独死予備群は2700万人近くにのぼると見られている。話題書『無葬社会』の著者で浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏がいう。
「きちんと地縁や血縁に根ざした供養を受けられず、誰にも見送られず、宗教的な弔いもなく送られていく。そういうケースが、年々増えています。それを私は“無葬社会”と呼んでいます」
すでに首都圏では大量の死者をさばききれない、深刻な状況にある。火葬場は過去に例がないほどの“混雑”となっている。そのため、横浜市や名古屋市などの一部の斎場では、これまで「友を呼ぶ」ということで避けられていた友引の葬式や火葬を行なうところも出てきた。
火葬場が混み合う理由については、葬儀場での葬式を省略し、火葬場でお別れをする“直葬”の増加が影響しているとみる専門家もいるという。
簡略化の波は、僧侶の手配にまで及んでいる。葬儀関連のベンチャー企業「みんれび」は、2015年12月にアマゾンで僧侶の手配サービスの販売を開始した。その名も「お坊さん便」。ネット上で「法事法要手配チケット」を購入し、日時と場所を指定すれば僧侶がやってきて、お経をあげる。価格は3万5000円から。
「みんれび」は同様のサービスを2013年から始めていたが、アマゾンで申し込めるようにしてから注文が急増した。
「具体的な数字は公表しておりませんが、2016年の年間のお問い合わせ件数は前年比約2倍になっています」(みんれび広報)