昨今「室内墓」が活況だ。都会のビルの中に納骨堂があり、そこでお墓参りができる。「寺」や「檀家」といったことではなく、いかに遺骨を残し、そして遺族が遠くの墓ではなく近くでお参りをできるか――。そういったニーズを満たす墓が増えている。
本誌・女性セブンには「お墓をどうしようか悩んでいたのですが、参考になりました」「夫にも読ませて、今度一緒に室内墓を見に行こうと思っています」「こんなことになってるなんて」などお墓にまつわるさまざまな声が寄せられている。進化するお墓の最新事情をノンフィクションライターの井上理津子さんが追った。
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岡田美子さん(仮名、58才、東京都)は、今年1月徳島から東京のお墓に改葬した。改葬先となった「仏壇型の納骨堂」は、東京都渋谷区代々木の立正寺というお寺の中にある。
「うちの場合、立正寺さんと“見えない糸”で昔からつながっていたんじゃないかと思えるんですよ。素敵なところだから、ご覧になって」と美子さんが紹介してくれ、訪ねた。
新宿から小田急線でわずか2駅の参宮橋駅から歩いて3分の住宅街に建ち、3階建てほどの高さだ。自動搬送式のお墓4か所を立て続けに見てきた私の目には、小さなお寺と映ったが、自動搬送式の建物が巨大すぎて、感覚が麻痺していたのだと、ほどなく思い改めた。折も折、境内に入るとすぐに、桜の古木が咲き誇っていて、ふっと心が和らぐ。
◆“商売”のために“お客様”に寄りすぎるのもどうか
住職の吉崎長生さん(65才)が対応くださった。
「法華宗の本門流。京都の大本山本能寺が本山です。岡田さんのご実家と同じ宗派なんです。お母さまの葬儀の席で偶然の巡り合いがありました。東京に懇意なお寺がないとのことで、たまたまの仏縁でした」
美子さんが言った「偶然とは思えない出合い」「見えない糸」とは、家の宗派のことだったのだ。お墓は宗派不問とアピールするところが多い中、ここ立正寺は信仰を大切にするお寺らしい。