芸能

牛尾刑事・片岡鶴太郎 セリフが多いのに寡黙な男の演じ方

「終着駅」シリーズで牛尾刑事を演じる片岡鶴太郎

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、片岡鶴太郎が「終着駅」シリーズで主人公の牛尾正直刑事を演じるにあたって監督から言われたこと、そして監督の演出イズムをどのように理解しているのかについて、片岡自身が語った言葉をお届けする。

 * * *
 片岡鶴太郎は1996年からテレビ朝日「土曜ワイド劇場」枠の「終着駅」シリーズで主人公の牛尾刑事を演じ続ける。監督は一貫して、かつては市川雷蔵の映画などを撮ってきたベテラン・池広一夫だ。

「監督からは『牛尾刑事は寡黙な男なんで、そんな感じでやってくれる?』と言われていました。それならセリフも少ないんだろうと思って台本を開いたら、とんでもなく多いんですよ。『寡黙だというのに、こんなに喋っていいんですか』と監督に言ったら『いいの』って。ようするに、『字面を見ると多いけど、それをおしゃべりだなと思わせないで、最終的に寡黙だと印象を与えればいい』ということです。

 たしかに、牛尾刑事は無駄口を叩かないんですよね。その時その時に誠実に接していく。謎解きの場面のセリフは多いですが、感情を抑えて冷静に演じることで、あまり喋っていないようにしようと思っています。

 池広監督は、今はこの一本だけを撮られています。年に二回。つまり、監督にとっては一年の全てがこのための日々なんですよね。出来あがった台本は監督の熱いメッセージの詰まったラブレターだと感じています。ですから、台本には一切何も言いません。『本当にありがとうございます』と監督に言って、毎回撮影に入っていきます」

 2014年の『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日)では、若い刑事たちを陰から支える課長役で出演している。

「主演の竹内涼真くんは芝居の経験のないまま来ているわけですよね。それに演技を付けて指導するのは監督です。そういう時、僕はいつも監督が彼に何と言っているかを聞いています。『これは僕に向かって言っているんじゃないか』と捉えると、自分のためになるんですよ。『これはこうしてくれなきゃ』というダメだしを『なるほど、そうだ』と自分に置き換えています。

 年数を重ねてくると、監督も何も言わなくなってくるんです。ですから、若手に言いながらも『これはみんなに言っている言葉だ』と考える。そうすると監督の演出イズムが理解できますし、面と向かって言えない真意も伝わってくるんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》週刊ポストが1年前に託された最後のメッセージ「私の人生は野球に始まり、これからも常に野球とともにあります」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは(イメージ)
中受で超難関中高一貫校に入学した「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは「腹痛と下痢を繰り返し、成績は最下位クラス…」《エリートたちの発達障害》
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン