会社が潰れれば、社員とその家族は路頭に迷い、取引先などに多大な損害が生じる日本では長らく倒産=悪と考えられてきた。ところが、現実はそればかりではない。破綻企業の元社員たちは別の企業に移って活躍し、収入が増える人も多い。考えるべきは会社の枠組みではなく、人材や技術をどう守るかだ。
東芝問題の経過は、その“枠組み”を守るための試行錯誤に終始しているように見える。
2016年末には稼ぎ頭だった医療機器の東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却し、今後は東芝メモリとして分社化する半導体事業も手放そうとしている。それらの売却で得た資金により財務状況を改善しようとしているが、これは債務超過に陥らないための数字合わせに過ぎない。その背景には債権回収が滞らないよう、東芝という企業の枠組みを死守しようとする銀行の思惑がある。
政府にも、東芝は存続させなければならないと、政府系ファンドが支援に乗り出すという話もあるが、愚の骨頂であろう。
そうした対応では東芝問題で表面化した、多くの日本企業が抱える「経営の拙さ」と向き合うことにはならないからだ。