ここ最近ブームになっているのが落語。そのきっかけのひとつとなったのが、2010年6月に隔月コミック誌『ITAN』(創刊当時は季刊誌)で連載がスタートし、2016年にはアニメ化もされた漫画『昭和元禄落語心中』だ。原作者の雲田はるこさんは、もともと落語が好きだった。雲田さんに話を聞いた。
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連載を始める数年前に浅草演芸ホールの寄席に行ったんです。平日の夜でした。客席は10人いるかいないかくらい。こんなにいいものなのに、お客さんが少なくて悲しいなって。
もっとお客さんが増えたら落語家さんも嬉しいだろうし、寄席のかたも嬉しいだろうし。それにお客さんが増えることで、落語家さんが気分よく乗ってネタをやってくれれば、私も嬉しい。
だから、寄席に人が行きたくなるような作品を描きました。登場する落語家さんは、寄席を大事にする人たちばかりにしました。
落語家さんは、色っぽいし、かっこいいんです。いい落語家さんは、指の先にまで拘こだわってやっています。そういうところに色気が出ると思うんです。仕草、目線、指先まで注意して描きました。
落語家さんが「おれたち格好いいだろ」とは職業的に言えないので、ファンの立場から、あなたたちは格好いいですと言いたかったし、いろんな人に伝えたかったんです。
〈雲田さんによれば、漫画は落語の魅力を伝えることに適しているメディアだという。その具体例の1つが、主人公・与太郎が『芝浜』を演じる場面だ。師匠ではないが、与太郎の憧れの落語家・助六が『芝浜』を演じたときと同じコマ割りと構図にしている〉
このシーンは、与太郎が完全に助六の『芝浜』をコピーして高座にかけるシーンなので、どうしても同じにしたかったんですね。落語は、「師匠とそっくりだね」というのが褒ほめ言葉になるんです。そっくりにできることや物まねのように声色まで似せられることが、すごくいいことになるんです。
この作品に出てくる人物は、みんな欠点がある人たちばかりです。それでも全部肯定していこうという気持ちで作品を描きました。実は、そんなことを落語を聴いていると感じるんです。私が落語を聴いて感じることを漫画に詰めて、漫画を読んだ時に、読者のみなさんが「落語ってこういうものなんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。
※女性セブン2017年4月27日号