米朝開戦前夜の様相を呈すなかで、地政学リスクが懸念され日経平均株価の下落が続いている。一方で、市場関係者の間では「有事によって特需が生まれる可能性」が囁かれ、赤外線など防衛市場向けシステムを扱う銘柄や、小銃メーカーなど、防衛関連の株に注目が集まっている。
株式評論家の植木靖男氏は、有事の際に需要が生まれる業界として「運輸関連」もあると説明する。
「かつての朝鮮戦争時、日本は軍事用品や生活用品を朝鮮半島に搬送しました。1950年代には日本郵船などが釜山と日本のピストン輸送を担った結果、海運株が急騰しました。現代においては海運だけでなく、空路での運搬の需要が生まれるでしょう。有事にあたっては航空会社の株にも注目が集まることが考えられます」
自動車評論家の国沢光宏氏は、「自動車産業への影響も大きい」とする。
「朝鮮有事では、韓国企業の生産力が衰えることは必至です。その場合、日本企業が代わりに製品をつくって世界に貢献する必要に迫られることになる。
韓国企業には、自動車販売台数で世界第5位の現代自動車をはじめ、日本のメーカーと競合関係にある企業がたくさんあります。韓国は密接な経済関係のある隣国である以上、有事による混乱は日本経済にダメージをもたらす一方で、日本企業に新たな需要が生まれる側面もあるでしょう。
実際に、(1950年代の)朝鮮戦争の際も韓国軍の軍備を緊急に補うため、日本の工業力が大いに活用されました。今回も戦闘が長引くほど、日本は米韓軍の兵站としての役割が大きくなることが想定できます。
航空業界も、韓国国内で軍用機の整備を行なうと攻撃対象になるため、日本国内の自衛隊基地で行なうことになる。愛知県に集中する三菱重工や神戸や岐阜にある川崎重工、栃木県宇都宮市にあるスバル(旧・富士重工)の工場から部品を調達せざるを得なくなるのではないか」
※週刊ポスト2017年4月28日号