「ワイン王国」のフランスは1960年代、世界一の飲酒国(1人年間100リットル)だったが、現在、飲酒量は半分以下(42リットル)に減った。
政府が飲酒による健康被害と労働生産性の低下など社会的損失の増大を旗印に飲酒規制を敷いてきたからだ。ワインのテレビCMを全面禁止し、国民に「ワインを飲むとがんの発生が高まる」というパンフレットを配布、ワイナリーには低品質のワインを大量生産するのではなく、品質を高めることで価格を引き上げさせた。飲食店での酒の提供にも厳しい免許制度を取っている。
反動も起きた。消費減少と輸出低迷に苦しむワイン業界は2009年から「禁酒主義者がフランスをダメにする」と政府の飲酒規制に反対運動を展開したが、それでも飲酒量は減少の一途を辿っている。
米国では40州で公園、ビーチ、河原など公共の場での飲酒が禁止されている。もちろん、花見酒はアウトだ。バーベキューパーティが盛んな国だが、自宅の庭など私有地内でしか屋外飲酒は認められない。
在サンフランシスコ日本領事館のHPでも、公共の場で酔っていれば逮捕され、6月以下の禁固または1000ドル以下の罰金が科せられると説明し、「レストランやバー、友人宅におけるパーティ等のプライベートな場で飲酒した場合でも、その後、公共の場に出れば、全て違法行為に該当することとなります」と警告している。
カナダはもっと厳しい。公共の場所での禁酒は当然だが、野球場にも広がった。2009年からはトロント・ブルージェイズの本拠地ロジャースセンターで酒の販売と飲酒が全面禁止され、観客数が激減した。
※週刊ポスト2017年4月28日号