中国は空母『遼寧』を就役させ、さらに2隻の空母を新造中。南シナ海を含む西太平洋の海洋覇権を狙う。軍学者・兵頭二十八氏は、日本及びアジアの平和を守るための秘策を提案する。それは合法的かつ中国艦隊を一挙に無力化する弾道ミサイルの配備だ。
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中共軍の海洋支配政策の主柱は、単艦の大きさでも隻数でも近隣諸国を圧倒する艦隊と支援船舶だ。現在大連と上海で新造中の2隻の航空母艦も、アセアン諸国を脅し上げる屈強の道具になるだろう。
そもそも1988年にスプラトリー諸島の「ジョンソン南礁」でベトナム軍守備兵を皆殺しにしながらも、空母がなかったために島嶼占領は諦めて引きあげねばならなかったという体験が、中共をして「空母軍拡」に邁進させてきた。使える空母が揃うほどに彼らは近海でやりたい放題になるはずだ。中共封じ込めの鍵はこの空母の無力化にかかっている。
近未来の西太平洋を「中共に隷属した海」とさせないためには、わが国には敵性国の大型艦、なかんずく空母をいつでも特定海面から追い払い、あるいは敵本国の軍港においてすら破壊してしまえる実力があるのだと平時から中外に強調しておくことが合理的だ。幸い日本はもうその技術を手にしている。
1998年から宇宙観測用に打ち上げられている国産の2段式固体ロケット「SS-520」は、140kgの観測機器を高度800kmまで持ち上げる推力がある。これを通常の弾道ミサイル軌道に改めると、重さ数十kgのソリッド(金属塊)弾頭を1800km先へ落とすことが可能だ。
精度に関しては、弾頭部に取り付けるセンサーと空力フィンにより、かつて米軍が西ドイツに展開した地対地弾道弾の「パーシングII」(射程1800km弱、座標が既知の目標に対する着弾誤差30m)と同等のものができるだろう。海自の呉基地近くから発射しても渤海のいちばん奥まで届く。