【書評】『野村證券 第2事業法人部』/横尾宣政著/講談社/本体1800円+税
【著者プロフィール】 横尾宣政(よこお・のぶまさ)/1954年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業後、野村證券入社。1998年に退社、独立し、コンサルティング会社設立。オリンパスの巨額粉飾決算事件で証券取引法・金融商品取引法違反容疑で逮捕。1・2審で有罪判決を受け、最高裁に上告中。
バブル期の金融機関の実態を振り返る本が立て続けに出版されている。本書もそのひとつで、「バブル期の野村證券でいちばん稼いだ男」と言われる元幹部候補生の著者が、当時の苛酷なノルマや猛烈な営業ぶりを語っている。ちなみに著者は、2011年に発覚したオリンパス巨額粉飾決算事件の「指南役」とされて逮捕され、1・2審で有罪判決を受け、現在最高裁に上告中の身でもある。
戦後最大の経済事件であるイトマン事件に際し、匿名の内部告発文を上層部、マスコミ、大蔵省に送るなど銀行内部から正常化に向けて画策し、昨年その内幕を実名で描いて大きな話題を呼んだ『住友銀行秘史』の著者・國重惇史氏(元住友銀行取締役)は、本書をどう読むか。(インタビュー・文 鈴木洋史)
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本書の著者は、昼は担当企業の1階にある公衆電話から電話して相手を“急襲”し、夜は担当企業全200社の全役員の自宅に面会のアポを求める電話を掛ける。そうした営業によって次々と担当会社を陥落させていったそうです。
國重:一読して思ったのは、ええかっこしすぎじゃないか、と。実は僕の本もそうなのですが(笑)。自分がいかに凄かったかという武勇伝のオンパレードですが、僕も彼も、その一方で恥ずかしい失敗があったと思いますよ。
実は僕の前の奥さんは若い頃に磯田一郎会長の秘書だったので、僕が本を出したあと、本に登場させた元役員たちから電話がかかってきて、「お前が國重に情報を提供したんだろう」と責められ、「國重ばかりええかっこしやがって」「何様だと思っているんだ、あいつは」と文句を言われました。僕には直接の電話はありませんでしたが、今年の正月、元役員たちから年賀状が一枚もこなくなりましたよ。