「米国が無謀な挑発をすれば即時打撃する。全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃で対応する」。4月15日、北朝鮮・平壌の軍事パレードで、朝鮮労働党の崔竜海・副委員長(67才)はこう演説した。
同日のパレードでは、米本土を標的にすると見られる大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイルなど、最新兵器がズラリ。さながら“展覧会”の様相を呈していた。
目下、朝鮮半島の緊張感が極限まで高まっている。金正恩(33才)が最高指導者に就いた2012年以降、60回を超えるミサイル発射に加え、計5回の核実験を強行。アメリカ本土に到達しうる核兵器は完成間近だといわれている。
一方、近く実施が囁かれている6回目の核実験を前にアメリカは強硬姿勢を崩さない。4月8日、トランプ大統領(70才)は空母カール・ビンソンやミサイル駆逐艦を朝鮮半島近海に派遣。7日の米軍のシリアへの爆撃も北朝鮮への圧力だとの見方が多く、実際、米NBCテレビは13日、複数の米情報機関高官の話として「北朝鮮が6回目の核実験を実行すると確証を得た時点で米軍は先制攻撃を行う準備を整えている」と報道している。
「もちろん可能性としては極めて低い話です。米軍が先制攻撃をして戦争になった場合、真っ先に被害を受けるのは隣の韓国です。ソウル市内には米韓連合軍の司令部がありますから。首都が爆撃される事態を招く先制攻撃を韓国政府が許容するはずがないし、5月の大統領選では北朝鮮に融和的な候補の当選が有力視されています。金正恩もそれがわかっているので、今リスクを冒すはずがない」(北朝鮮に詳しいジャーナリストの惠谷治氏)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長の高英起氏も「戦争になる可能性はほぼない」としながら、次のように語る。
「北朝鮮は事実上核を保有しています。かつてアメリカが核保有国を攻撃した例はありません。在日米軍、在韓米軍、つまりアメリカ人が核の脅威にさらされることになる。そんなことは当のアメリカの議会が認めないでしょう。ただ、過去の例を見ても、戦争というのは精密に計画して起きるものではないんです。何かを読み間違えて発射した砲撃一発が引き金になったり、偶発的な出来事の積み重ねで、誰も予想しない瞬間に始まるものです」
とりわけトランプ大統領は、これまでの言動を見るに、何をしでかすかわからない男である。万一、ボタンの掛け違いで米国が先制攻撃に踏み切った場合、私たちも他人事ではいられない。
※女性セブン2017年5月4日号